75歳の祖父が「孫の教育資金」として「100万円」援助してくれるそうです。税制が改正されて厳しくなったと聞いたのですが、何か注意点はありますか? 課税されてしまうのでしょうか…?
「都度贈与」の場合には「持ち戻し」が適用されない
都度贈与とは祖父母が孫の教育費や生活費のうち、通常必要と認められるものを、その都度贈与する方法のことです。生活費や教育費の名目で受け取った財産のうち、その都度渡されたものには、税金を課せられないことが法律で定められています。 ただし、教育資金として使われたことを明確にしなくてはいけないので、領収書を保管しておく必要があります。また、贈与額や贈与日も明確にしておくことが望ましいです。現金の手渡しではなく、金融機関へ振り込みをしてもらうことによって、記録を残すとよいでしょう。 また、この方法においては、「未来に発生する教育費用」のための贈与は、非課税対象外となるケースがあるため、注意が必要です。 都度贈与は暦年贈与と比較した場合、資金使途の制限や領収書の保管が必要といった注意点もありますが、「持ち戻し」を心配しなくて良い点は最大のメリットでしょう。
贈与金額が大きい場合には「教育資金の一括贈与」という方法も
「教育資金の一括贈与」とは、親や祖父母から30歳未満の子や孫へ、受贈者1人につき教育資金1500万円までを非課税で贈与可能な制度です(塾や習い事、留学などの費用の場合は内500万円まで)。この方法では、前項にて紹介した都度贈与や暦年贈与よりも、大きな金額をまとめて贈与できます。 手続きについてですが、親や祖父母が金融機関(銀行や信託銀行など)と贈与資金管理の契約を結んだ上で、一括で子や孫名義の口座に入金します。受贈者である子や孫は教育資金であることを証明できる領収書などを金融機関に提出することで、その相当額を非課税にて引き出すことができます。 ただし注意点がいくつかあります。一括で入金された金額を使い切る前に、贈与した祖父母や親が死亡した際、受贈者が23歳以上の場合には残額が相続税の課税対象となるケースがあります。また、受贈者が30歳を超えてしまった場合にも契約終了となり、残額が贈与税の課税対象となります。
贈与方法については慎重に検討を
祖父母がせっかく好意で贈与をしてくれるにもかかわらず、後に税金を納めないといけなくなる事態は何とか避けたいですね。「都度贈与」や「教育資金の一括贈与」といった贈与方法を事前に把握し、適切な方法を選びましょう。 また、税改正は定期的に行われており、現状の非課税制度がいつまで利用できるかは定かではありません。加えて、贈与を行う側の祖父母や両親の意思判断能力が低下してしまった場合には、贈与が認められないケースもあります。祖父母などから贈与の話が出た場合は、可能な限り早めの行動を心がけましょう。 出典 国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) 国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合 財務省 令和5年度 税制改正の大綱 国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし 執筆者:小林裕 FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
ファイナンシャルフィールド編集部