なぜ地方空港で「航空燃料不足」が起きたのか? その背景と対策、持続可能な航空燃料(SAF)普及への取り組みを国交省航空局次長に聞いた
2024年7月19日に開催された「第24回観光立国推進閣僚会議」で、岸田首相がインバウンド旅行者の地方への誘客促進の一つとして、地方空港での航空燃料確保を含む緊急対策を直ちに講じるように指示を出した。唐突とも感じられた、その指示の背景には何があったのか。その舞台裏と、インバウンド旅行市場との関係について国土交通省航空局の蔵持京治次長に聞いてみた。
燃料不足はコロナ渦の後遺症
地方空港での航空燃料不足が顕在化してきたのは今年の5月のことだという。蔵持氏は「アジアのLCCを中心に外国エアラインから地方空港に飛ばしたいという要望が増える中、全国各地で外国エアラインへの航空燃料の供給ができない状況が生じて、新規就航や増便を見送るケースが出てきた」と説明する。調査をすると、その規模は15空港で週140便にも及んだ。 日系航空会社の場合は、日頃から石油元売会社との付き合いがあり、密な情報共有が行われているため、コロナ後の復便にも対応できた。一方で、外国エアラインの場合はそうはいかないようだ。外国のエアラインが日本の空港に新規就航や増便をおこなう場合、石油元売会社に航空燃料の供給を確認するが、その供給は厳しいとの回答が増えてきた。 蔵持氏によると、その理由の一つは生産量の問題。ジェット燃料は需要に応じて生産されるが、需要が少ない場合や季節によっては輸入で賄われるという。しかし、いずれにしても急な復便に即対応できるわけではなく、準備にはある程度の時間が必要になる。 もう一つの問題はロジスティック。その送油方法は、空港によって異なるが、ここでも人手不足が大きな課題になっており、根詰まりが起きているという。 いずれにせよ、問題の根源はコロナ後の急速なインバウンド市場の回復だ。「1年ほど前は、空港のグランドハンドリングの人手不足が大きな問題となったが、この燃料不足はコロナ後遺症の第2弾」と蔵持氏。インバウンド需要の急回復による需給バランスの崩れが航空燃料にも現れた形だ。