生成AIブームの中で独り勝ちするエヌビディア、追いすがる「日の丸半導体」
技術進歩の激しい半導体をめぐる情勢がにぎやかになっている。世界最大の受託生産(ファウンドリ)、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本に半導体製造工場を建設、北海道には次世代半導体の量産を目指すラピダスの進出が決まり、「産業のコメ」とも言われる半導体への積極投資が目立っている。 この10年間、開発で遅れをとった日本としては、半導体復権の「最後のチャンス」といわれており、日本経済再興のリード役になれるかどうか注目されている。そこで調査会社「オムディア」のコンサルティングィレクターである杉山和弘氏に半導体を取り巻く現状と今後の見通しについて聞いた。
今年はメモリー価格が回復
昨年の半導体メモリーは、インフレの激化や中国経済の低迷などによる電気機器需要減少から価格が急落、さらにコロナ禍からの回復過程でユーザー側が買いすぎて在庫が過剰になったことから業績が悪化した。 杉山氏は今年について「オムディアの予測では、メモリー市場は価格回復から金額ベースで前年比40%成長すると予測。その結果、半導体市場全体も前年比、11%の成長を見込む。電子機器全体も4.5%増えるとみているので、今年の業績は回復する。生成AI(人工知能)ブームにより半導体需要が増えている。これをサポートするデータセンターも各地に作られており、ここでも半導体が大量に使われている」と分析する。 半導体の中でもメモリーは、シリコンサイクルと呼ばれるように数年ごとに好不況の波を繰り返してきたが、今回の需要増の波は生成AIに支えられており、産業界全体に広がる勢いを見せているため、杉山氏はこれまでにない大きな波が来ると予測している。
AIサーバーが大量の電力消費
「生成AIを組み込んだChatGPTが2022年の後半から出てきたため、AIサーバーが主流になってきた。あらゆるデータをAIに覚えさせるためには、それだけの電力を多く消費する。このためにAIサーバーが入っているデータセンターの電力消費量が急激に増加しているという問題は今後、さらに顕著になってくる」と将来的な電力消費の増大を心配する。 「AIサーバーはこれまでのサーバーと違って、エヌビディアのGPU(画像処理装置)を8~10個もつけている『H100』というAIチップが搭載されている。グーグル、マイクロソフト、アマゾンなど大手ITは、こぞってこの米国の半導体大手のエヌビディアのチップを使っている。その投資額は膨大な金額になっている」と明かす。