愛車の履歴書──Vol54. 池松壮亮さん(前編)
燃料電池自動車、初体験
ハイブリッド車の次に試乗したのは、トヨタ「クラウン(セダン)」のFCEV(燃料電池自動車)。 まずは、燃料電池(Fuel Cell)の仕組みを簡単に説明する。 燃料電池の仕組みは、“水に電気を流すと酸素と水素が発生する”という理科の実験の逆。すなわち、“酸素と水素を反応させると、電気と水が生まれる”というものだ。水素は車載タンクに貯蔵し、酸素は走行中に取り入れ、発電を行う。ここから先は電気自動車と同じで、電気でモーターを駆動する。 これを聞いた池松さんは、「なるほど、おもしろいですね」と、興味津々の様子。早速、クラウンの運転席に乗り込み、試乗を開始した。 「なんですか、これはめちゃくちゃスムーズですね。“燃料電池”と聞いて、すごいメカニズムのクルマなイメージをしていましたが……ものすごく運転がしやすいです。NSXは気に入ったけれど、荷物が載りません。その点、クラウンならばっちりですね。にしても走りが滑らかです」 ここで、センターディスプレイを空気清浄メーターの表示に切り替えてみる。すると、走行中に取り込む空気が浄化されて排出されることが示される。 「すごい! FCEVは排出ガスがゼロだとうかがいましたが、むしろ空気を綺麗にしながら走っているわけですか。これなら、空気を汚しているという罪悪感ゼロで乗れますね。走る空気清浄機のよう。乗り心地もとても快適だし、FCEVという選択肢もアリかもしれません。家から割と近いところに水素ステーションがあって、燃料電池車とは、と気にはなっていたんです」 池松壮亮さんの愛車電動化計画、ファーストインプレッションは上々のようだ。後編では、輸入車のBEV(バッテリー式電気自動車)に試乗していただく。
【プロフィール】池松壮亮(いけまつそうすけ)
1990年生まれ、福岡県出身。2003年、トム・クルーズ主演の『ラスト サムライ』で映画デビュー。これまで映画を中心に数々の作品に出演、受賞歴多数。映画『宮本から君へ』(2019年)でキネマ旬報ベスト・テン主演男優賞ほか。2023年度は芸術選奨文部科学大臣賞新人賞を受賞。2024年は『ぼくのお日さま』、『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』、11月8日から『本心』が公開。 文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・FUJIU JIMI 編集・稲垣邦康(GQ)