【このニュースって何?】 日本の高齢化率は世界最高 → 高齢化っていいこと?
日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんがヒントを教えます。
急速に進む少子高齢化
9月16日の「敬老の日」にあわせて、総務省が65歳以上の高齢者の人口推計を発表しました。それによると、9月15日時点の高齢者は前年より2万人多い3625万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は0.2ポイント増の29.3%になりました。つまり、だいたい日本人の10人に3人が高齢者というわけです。人数も率も比較可能な1950年以降で過去最高です。また、高齢化率は世界の200カ国・地域でもっとも高いのだそうです。 日本人の2023年の平均寿命は女性が87.14歳、男性は81.09歳です。女性は世界首位で、男性は5位です。戦後間もない1947年には女性が53.96歳、男性が50.06歳でしたが、年々延びてきました。一方、生まれてくる子どもの数は1947年に約270万人でしたが、2023年には約73万人と激減しています。 長生きになったことよりも子どもの数が減ったことの影響のほうが大きく、日本の総人口は08年をピークに減っています。総人口という分母が減って、65歳以上の人口という分子が増えているわけですから、高齢化率は上がります。2050年には日本の高齢化率は37.1%になると推計されています。 高齢化率が上がっているのは日本だけではありません。韓国や中国も上がっています。韓国は2024年で19.2%です。今はまだ日本より低いのですが、出生率が日本より低いため、2040年には34.3%になり、2050年には40.1%と日本を上回る高齢化率になると推計されています。 中国でも少子高齢化は進んでいます。高齢化率は年々上がって、2023年には15.4%になっています。中国は2024年9月、70年以上変わっていなかった定年年齢を男性は60歳から63歳に、女性は50歳(事務職など「女性幹部」は55歳)から55歳(同58歳)に引き上げる、と決めました。若い世代の人口が減っているため、高齢者に働いてもらわないといけなくなっているのです。 経済成長すると人々の生活が豊かになり、人生の選択肢が増えます。子どもを産んで育てること以外の人生に重きを置く人が増えるのです。そのため少子化が進む一方、医療の発達、栄養状態の改善、清潔な環境、国情の安定などにより長生きができることになり、高齢化率が上がるという仕組みです。東アジアでは、日本、韓国、中国の順で急激な経済成長があり、その順番で高齢化率が上がっているわけです。 高齢化が進むということは、基本的に喜ばしいことです。長生きしたいという人々の願いがかなえられるわけであり、社会がよりよくなっていることを示すものでもあります。 ただ、高齢化は経済成長を押し下げる要因でもあります。医療費、介護費、年金などの国の負担が増えるためです。おもに働く世代が払う税金や社会保険料が増えることになり、経済成長に使われるお金が減るということになります。