荒井由実、細野晴臣からYMOまで...。プロデューサー/音楽家・村井邦彦が語る伝説のアルファレコードとシティポップ「魅力はアナログじゃないかなと思う」
村井 服部さんは1920年代からジャズを演奏し、日本のポピュラー音楽の礎(いしづえ)を作った。その後1950年代にジャズシンガー・雪村いづみさんがデビューして、1960年代に僕のようなものが出て、1970年代に細野くんらが出てきた。細野くんは戦前のアメリカの音楽が好きで服部さんとも通じているところがあるのです。 過去の作品を世代を超えて次の時代へつないでいく。そういう文化の継承性をアルファはすごく大事にしていたんです。その意味で『スーパー・ジェネレーション』は是非とも聴いてほしい一枚ですね。 ――ありがとうございます。最後に村井さんの好きな言葉を教えていただけませんか? 村井 「美は力なり」ですね。川添(浩史)さんから教えてもらいました。もとの言葉は17世紀のイギリスの哲学者フランシス・ベーコンがいった「知(識)は力なり」です。「村井くん、優れた芸術作品が人を感動させ、人の心を動かすことが世の中を変える力になりうる」って教えてくれました。 この本のタイトル『音楽を信じる We Believe in music!』は、もとはアルファミュージックの社訓でした。僕たちの力の源泉は美であり、そして音楽。僕自身のモットーでもあり、永遠に変わることがないんですよね。 ●村井邦彦(むらい・くにひこ) 作曲家、プロデューサー。米国ロサンゼルス在住。1945年東京生まれ。慶應義塾大学卒。69年に音楽出版社アルファミュージック、1977年にレコード会社アルファレコードを設立し、赤い鳥、荒井由実、吉田美奈子、イエロー・マジック・オーケストラなどを世に送り出した。代表曲に「翼をください」「虹と雪のバラード」(札幌オリンピックの歌)など。 『音楽を信じる We belive in music!』村井邦彦 日本経済新聞社刊 価格/1870円(税込) 『Linda Carriere』 リンダ・キャリエール ソニー・ミュージック 価格/¥3300(税込) 2024年7月17日発売 1977年に細野晴臣とアルファレコードがプロデューサー契約を結び、その第1作として山下達郎、佐藤博、吉田美奈子、矢野顕子らの協力で制作されながらも、お蔵入りになっていたニューオリンズ出身シンガーの幻のデビューアルバム。47年の歳月を経てついにリリース! 取材・文/大野智己 撮影/グレート・ザ・歌舞伎町