荒井由実、細野晴臣からYMOまで...。プロデューサー/音楽家・村井邦彦が語る伝説のアルファレコードとシティポップ「魅力はアナログじゃないかなと思う」
村井 ヨーロッパ、アメリカ、アジアで40~50年も前の日本の曲を多くの人が聞いてくれるのは、それだけ当時の日本の音楽のクオリティが高かったということでしょうね。 日本文化への憧れのようなものもあると思う。僕がユーミンの詞に作曲したハイ・ファイ・セットの「スカイレストラン」など、アルファのいろいろな楽曲のループがJ.コールなどの有名ラッパー達のトラックに使われています。現代のラッパーたちは僕たちが作った音楽に魅力を感じてくれているのだろうと思います。 彼らが惹かれる理由は、アナログ録音への憧憬じゃないかなと僕は思います。弦楽器や管楽器などすべて生の楽器による演奏で、じつにきらびやかです。いまはデジタルの打ち込みが多いので、アナログの生録音が新鮮に聴こえるのではないかなと思います。 ――すべてアナログとは、制作費も随分とかかっていそうです。 村井 ものすごかったですよ(笑)。40年前の金額で、一枚作るにあたって1千万円はくだらなかった。3千万かかったものもあります。今は制作費150万なんて話も聞くから、本当にびっくりです。デジタルなら安価に作ることができるから誰でも音楽録音ができる利点はあるのですが。 ――村井さんご自身から見て、いまの日本の音楽はどう映っていますか? 村井 いまの音楽はほとんど聴いていないんです。YOASOBIとか名前は知っているけど、それくらい。だからわからないんです(笑)。どこからか流れてくるメロディを聞いて、これはユーミンからの影響かななどと感じることはあるけど。いま聴いているのは、若い頃に好きだったクラシックやジャズばかりです。 ――それでは、これからアルファ作品を聞いてみようという若い人などに向け、村井さんが思うベスト3をあげていただけますか? 村井 ベスト3! それは難しいよね。どうだろう。ひとつはやっぱりユーミンの『ひこうき雲』(1973年)。ユーミンのファーストアルバムでバックを務めるキャラメル・ママ(ティン・パン・アレー)との初めての顔合わせとなった作品。とにかく曲も歌も演奏もすべてみずみずしいよね。才能あふれる若者たちの感性が素晴らしい。 2枚目はやっぱりYMO。どれでもいいけど最初のインパクトを思えば、ファーストアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』(1978年)かな。 3枚目は何だろう。赤い鳥もいいし、ハイ・ファイ・セットもいいし......やっぱり難しい(笑)。あ、雪村いづみさんの『スーパー・ジェネレーション』にしよう。 ――「東京ブギウギ」など、服部良一さんの名曲をキャラメル・ママ(ティン・パン・アレー)をバックに、往年の大歌手である雪村いづみさんがカバーした作品ですよね。