荒井由実、細野晴臣からYMOまで...。プロデューサー/音楽家・村井邦彦が語る伝説のアルファレコードとシティポップ「魅力はアナログじゃないかなと思う」
アルファレコード創立者にして、音楽家、プロデューサー、村井邦彦氏が最新刊『音楽を信じる We belive in music!』(日本経済新聞社)を上梓した。 【写真】村井邦彦が選ぶアルファベスト3 本書は村井氏が自らの半生を綴った自叙伝。「翼をください」などの名曲を書き、高校生だった荒井由実を見出し、またシティポップの名曲を数々送り出し、さらにはYMOの世界進出を成功させる。 そんな華々しいキャリアにまつわるエピソードを、それぞれドラマのワンシーンのように、瑞々しくのびのびと執筆。氏に影響を与えたパリの地と著名人との日々、さらには「YMO前史」も書き下ろされ、氏が創立した伝説のレーベルアルファレコード、日本のポップカルチャーの源流を知るうえでも貴重な読み物になっている。 そこで村井邦彦氏にインタビューを敢行。本書の制作にまつわる裏話から、アルファミュージック創立の話や、現在のシティポップブームへ思うところまでを語ってもらった。 * * * ――村井さんの最新刊『音楽を信じる』は、ご自身の半生を綴った自叙伝。ご自身の生い立ちやこれまでのキャリアを辿るとともに、荒井由実、山上路夫、YMO、ハーブ・アルパート、トミー・リピューマなど国内外の錚々たる音楽家たちと過ごした日々が瑞々しく書かれています。 村井 この本は日経新聞に昨年2月に連載された「私の履歴書」に書き下ろしの原稿を加えた本です。とにかく書いていて本当に楽しかったですよ。資料を引っ張り出して、あの人とはどんな話をしたとか、あの時はどこへ行ったとか、昔のことを思い出していました。 もう何十年も前の出来事ばかりだけど、随分と覚えているものなんですよね。自分でも驚きました。 ――書き下ろしパートでは、村井さんが長年思いを馳せたパリの思い出や、ご自身が影響を受けたと語る著名人との交流を紹介。音楽家、アルファレコード創立者である村井さんの背景がより伝わってきて、興味深かったです。 村井 僕が初めてパリを訪れたのは1969年。前年に五月危機と呼ばれる学生運動から始まった大きなゼネストがあったんです。街中から若いエネルギーが溢れていた。同じ時期にアメリカでは有名なウッドストックのロックコンサートもありました。そうした時代背景は書き記しておきたかった。 その他、アトランティックレコードの創設者であったアーメット・アーティガンや、戦前、国際連盟で働き、後にNHK会長やフランス大使を務めたアルファの特別顧問・古垣鉄郎さんなど、僕が大好きな先輩たちの思い出も書きました。彼らからは大切なことをたくさん教えていただきました。 ――村井さんのアルファレコードが音楽界において革新的でインターナショナルであった原点を見る気がしました。また「YMO前史」なる章も。