動物病院を替えたら薬が効くようになったのは一体なぜ?【ワンニャンのSOS】
【ワンニャンのSOS】#79 「先生の説明を守って薬を飲ませたら、よく効きました。前の病院では効かなかったのに、なぜでしょう?」 【感染症別 正しいクスリの使い方/薬剤耐性】ペットや家畜への抗菌薬の乱用は人間にとって脅威になる危険 初めて来られた飼い主さんがしばらくしてこんなことをおっしゃいました。当院ではよくあることですので、今回は薬について紹介します。 多くの動物病院では、取引先から仕入れる薬袋を採用し、飼い主さんに使ってもらっています。イラストやキャラクターが描かれていてかわいいのですが、当院は使用しません。無地のユニパックやポリビニールの袋です。そこにペットの名前と服用方法(1日2回4日間など)をマジックで記入します。白の紙袋は循環器などの薬です。これも余白部分にメモ。これらをまとめてファスナーつきの袋に入れて、当院専用に使ってもらい、検査結果などもここに入れます。 イラストつきを使用しないのは、小児用の薬袋と似ていて、子供も飼い主さんも間違えやすい。小学校低学年くらいになると自分で薬を飲めるようになり、ペットの薬を自分の薬と間違えて誤飲します。逆に飼い主さんが間違えて小児用をペットに飲ませることも珍しくありません。ユニパックなどをまとめてチャック袋に入れる方法なら、間違えないでしょう。 さて、薬について。ペットの服用は丸飲みするのが一番で、おやつに包んで飲ませることがよくあります。ところが、ヒトの薬をペットに飲ませる場合、1錠では多過ぎでペットの体重に合わせて調剤することがあります。その調剤で薬の効果が下がる可能性もあるのです。 その典型が糖衣錠。糖でコーティングされている薬で、糖衣が胃酸で溶け、薬そのものは十二指腸で吸収されます。これを体重割で砕くと、薬が胃酸で溶け、効果が下がる恐れがあるのです。これを避ける方法がカプセルで、当院で糖衣錠を砕くときはカプセルに詰めてお渡しします。 ■保存は冷蔵庫で! 次に多いのが、シロップを活用するケース。使用できる薬が限られていて、一番は抗生物質でしょう。抗生物質が苦手だとシロップに溶かし、1回の分量を決めて、処方日数や回数に応じた分を写真のポリ容器に入れて処方します。少しでも薬の状態を安定させるため保存は冷蔵庫。これを守らず、ほかの錠剤と同じように常温で室内に保存すると、成分が分解されて効かなくなる恐れがあります。 ヒトが薬局で処方薬をもらうとき、薬の説明書が明細書と一緒に渡されると思います。動物でも同じ仕組みを採用するところが増えていますから、薬の写真と剤形が異なるときは調剤の理由などを質問するとよいと思います。 (カーター動物病院・片岡重明院長)