serial number12『Yes Means Yes』開幕 詩森ろば「今のタイミングでなければ存在しなかった作品」
serial number12『Yes Means Yes』が、2025年1月10日(金) に東京・ザ・スズナリで初日を迎え、作・演出を手がける詩森ろばのコメントが到着した。 【全ての写真】serial number12『Yes Means Yes』より スウェーデンには、「性的合意」のない性行為を禁じた世界初の法律「Yes Means Yes法」があるが、日本ではいまだ、レイプなど悪質な性加害においてさえ被害者側が泣き寝入りせざるをえない。本作では、自分にとって望ましい性のあり方を模索するひとりの女性の姿を描き出す。出演は、舞台・映像で活躍中の内田慈、他のすべての役を男性キャストが演じる。 公演は1月20日(月) まで。 ■詩森ろば コメント 『Yes Means Yes』は、今、このタイミングでなければ存在しなかった作品です。 それは内田慈さんありきの企画だったからというのももちろん大きいです。内田さんのために作品を書きたいということを前提でスケジュールをお聞きしました。それが一昨年の夏で、どんな企画にしようと逡巡し、この作品の構想が浮かび、「性的同意」をテーマにした、演じるうえで気持ち的にも分量的にも大変な作品になるけれどもどうでしょう、と企画をお伝えしたところ、やります、という言葉とともに「それはもしかしてひとり芝居ですか?」と聞いてくれました。ひとり芝居でもやってもらえるんだ、と思い、限りなくひとり芝居に近いものになると思います、と答えました。そして、わたしは考え続け、ただのモノローグドラマではなくダイヤローグもしっかりと組み込んだ構想を考えつきました。そこからも紆余曲折あり、このストーリー、このスタイルの作品に辿り着いたのです。 4人の男性キャストはオーディションで選ばれました。 まるでこの作品のために待っていてくれていたかのような4人でした。 作品を書き上げて稽古に入る前も、稽古場でも、内田さんはじめとした5人で親密に作品作りをしました。テキストは何度も修正されながら、磨かれていき、演出はどんどんシンプルになっていきました。膨大なモノローグを抱える内田さんは稽古場でもずっと戯曲に集中していましたし、わたしたちも集中して、ただただ作品作りをしていました。ある意味ビジネスライク。なのにほんとうに親密で、あの12月の稽古場は、いつも、世界にわたしたちしかいないのではないかという特別な空間でした。一生忘れないと思います。 この作品にはとても厳しい性被害のシーンが出てきます。インティマシーコーディネーターの西山ももこさんに入っていただき、繊細にシーン作りをしたつもりですが、それでも俳優たちは心も身体もたくさん削ったと思います。通し稽古を1回したらもうその日はおしまい、なにもできない。通しが終わり舞台装置となったソファに呆然と座り虚空を見つめる俳優の姿を目撃したのも1度や2度ではありません。「大丈夫?」と声を掛けると、小さな声で、「稽古が楽しい」と小さな声で言ってもらったこともやはり1度や2度ではありませんでした。近くでこれまた疲れ果てて倒れている内田さんがハッと起き上がって「楽しいよね」と言ってくれたこと。それもたぶん一生忘れないでしょう。 今、この時、このメンバーでなければ、そしてスズナリというおそらく世界でも類を見ない緊密でありながら広がりのある空間を持つ小劇場でなければ、『Yes Means Yes』は存在しなかった。深い喪失の物語であると同時に、仄かな再生の物語であるこの作品が生れ落ちる瞬間に立ち会っていただけたら幸いです。 <公演情報> serial number12 『Yes Means Yes』 作・演出:詩森ろば 【出演】 内田慈 松本入真 諏訪珠理 大川泰雅 段隆作 2025年1月10日(金)~1月20日(月) 会場:東京・ザ・スズナリ ※性的、暴力的な描写がございます。