「アメリカ二大政党制の岐路」(4)移民が米政治の膠着状態を変える? 上智大学教授・前嶋和弘
そのほかの「脱却シナリオ」
移民の影響という長期的な要因とともに、膠着状態から脱却できるシナリオはいくつかあります。例えば、ティーパーティ運動の行動原理にあるのが反オバマでしたが、オバマ大統領の任期後はもしかしたら、運動も一気に減速するかもしれません。また、第3回で述べたように、議員にとっては、そもそも「動かない」連邦議会への国民世論の批判がこれだけ強い中、自分の議席を守るために、超党派の妥協を訴えることは、合理的な選択でもあります。 ただ、昨年の中間選挙のアメリカ政治を見ていると、民主党と共和党の膠着状態は当分続きそうです。選挙で共和党に上下両院の多数派を譲ったのに関わらず、選挙以降、オバマ大統領はリベラル色を前面に出した政策を次々に表明しています。大統領権限による非合法移民に柔軟に対応する移民制度改革や、温暖化対策、さらにはキューバとの国交回復を含めた交渉開始など、オバマの急な攻勢はいずれも共和党への当てつけのようにすらみえます。特に移民制度改革については、上述のように移民が増えた将来を見通しての戦略のようにさえみえます。 1月から新しい114議会が始まったばかりですが、共和党側はオバマ大統領の姿勢に強く反発しています。20日の一般教書演説(日本時間21日)にオバマ大統領が何を盛り込んでくるのか、その中に膠着状態から脱却できるヒントはあるのか、大いに注目したいところです。 ・連載『アメリカ二大政党制の岐路』…全4回