<連載> Reライフ山歩き部 日本山岳会が創立120周年記念事業で山岳古道調査 歴史や文化を感じる新しい山の楽しみ方 近藤幸夫のReライフ山歩き部 第25回
2025年に創立120周年を迎える公益社団法人「日本山岳会」は、記念事業として全国に数多くある「山岳古道」の中から120を選び、調査を実施しています。すでに調査済みの山岳古道を同会のホームページで順次公開しており、書籍「日本山岳会が選ぶ『日本の山岳古道120選』」(仮称)としてまとめる方針です。山岳古道調査の意義や目的、楽しみ方などを山岳古道プロジェクトメンバーで同会副会長の永田弘太郎さん(72)に聞きました。
山の中の道「山岳古道」 廃道の危機にあるところも
国土の3分の2を森林が占める日本は、峠を越える道や山麓を通る道のほか、富士山や北アルプスの立山など山岳信仰としての登山道も古くから存在しています。 こうした山道のことを、永田さんは「山の中を通る道という意味で、日本山岳会が『山岳古道』と名付けました」と説明します。そして「山岳古道の中には利用されなくなって廃道の危機を迎えているケースがあります」と表情を曇らせました。 廃道の危機とはどういうことでしょうか。山奥での道路建設や災害、さらには山村の過疎化などにより、かつて街道や生活道路、参拝道として多くの人が利用していた山岳古道が使われなくなりました。そうすると、道は崩れ、藪が茂って道がなくなってしまいます。そして、そんな道があったことさえ、人々の記憶から消え去ります。
世界遺産になった熊野古道で注目を集める
山岳古道に注目が集まるきっかけになったのは、熊野古道だと考えられます。2004年7月、熊野古道を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」が、ユネスコの世界遺産に登録されました。 熊野古道とは、伊勢や大阪、京都と紀伊半島南部にある熊野の地を結ぶ道の通称です。古くは「くまのみち」や「熊野街道」とも呼ばれていました。 世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」は、「熊野三山」「吉野・大峯」「高野山」の三つの霊場と、これらを結ぶ「熊野参詣道(熊野古道)」「大峯奥駈道」「高野山町石道」からなり、三重県、奈良県、和歌山県にわたって広がっている世界遺産です。 世界遺産登録では、熊野古道が、自然と人との深いかかわりの中で形成された優れた文化景観を持ち、現在まで良好な形で伝えられていることが高く評価されました。