ヴィッセル三木谷会長が「頭おかしいんじゃないの?」と異議を訴えた日本代表国内組のW杯予選後2週間隔離措置の是非
必然的に昨シーズンのJ1リーグ戦王者・川崎フロンターレと天皇杯覇者・浦和レッズが対戦する、新シーズンの到来を告げる同12日のFUJIFILM SUPER CUP(日産スタジアム)へは、両チームから招集される選手の出場は不可能となる。 さらに同18日の川崎対FC東京を皮切りに、19日もしくは20日に8試合が組まれている明治安田生命J1リーグ2022開幕節にも大きな影響を及ぼす。 ウズベキスタン戦は中止となったものの、昨年の段階ですでに国内組だけが招集されている日本代表は、17日から予定通りキャンプをスタートさせる。引き続きアジア最終予選に招集された場合、隔離期間を含めて、長丁場のシーズンを戦う上でのベースを作る開幕前の大事な時期に、チーム練習にほとんど加われない状況が生まれる。 おそらくは大迫やDF酒井宏樹(浦和レッズ)、DF長友佑都(FC東京)、GK権田修一(清水エスパルス)、GK谷晃生(湘南ベルマーレ)が開幕直前でのチーム合流となる。キャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)が負傷離脱した状況を踏まえれば、DF谷口彰悟(川崎)も引き続き最終予選に招集されることも考えられる。 国際Aマッチデーにおいては、各国サッカー協会に代表選手を拘束する権利が生じる。日本にワールドカップの舞台で戦ってほしいと願うからこそ招集に応じるが、今回に限っては出国後に速やかに各所属クラブに合流できるヨーロッパ組と対照的に、国内組だけが2週間の隔離義務という代償を背負う点に三木谷会長は納得がいかなかった。 中国およびサウジアラビアの選手たちを特例で入国させ、アジア最終予選を実施する上で国民の理解を得るために、埼玉スタジアムのピッチ上で外国人と同じ時間を共有する選手たちを、特に日本国内において隔離する必要があったと思われる。 今後も厳格な水際対策が維持されるなかで特例を設ける以上は、国民の命や健康を守るためには2週間の隔離は当然と受け止める見方もある。オミクロン株が猛威を振るっている沖縄では、医療体制の逼迫を防ぐ上で「期間を短縮すべきだ」という声が上がりながらも、濃厚接触者に対する14日間の隔離期間が現時点でも定められている。 政府からの要請に対して、お願いする立場のJFAも応じるしかなかった。しかし、いまや外国人だけがオミクロン株の感染源ではない。全国規模で市中感染が確認されて久しい状況で、三木谷会長は経済への影響を懸念し楽天グループのトップとしての立場から、岸田首相が外国人の新規入国禁止を2月末まで延長した11日にこうつぶやいている。 <今朝の岸田総理の発表 今更、新規外国人を入れないことになんの意味があるのか? 判断があまりに非論理的すぎる。日本を鎖国したいのか?> 代表チームへ協力しながら不利益を被りかねない状況に、選手の派遣に難色を示すJクラブも出てくるのではないか、という懸念が実際にあった。 須原専務理事は「代表に優先権があるのは大前提」とした上で、7日の段階でこんな見解を示していた。 「ただ、今回に限定せず、代表の場合は常に国内外のクラブと密に連絡を取りながら、その時々の状況に応じて個別の相談をしてきました。今回も等しく同じです。技術委員会の反町(康治)委員長を中心に、各クラブとすでに丁寧なコミュニケーションを始めさせていただいている。しっかりと話し合いながら前に進んでいきたい」 しかし、話し合いを進めている過程で、大きな影響力を持つ三木谷会長が過激なつぶやきを介して異を唱えた。立場を同じくする代表選手を擁するJクラブも、政府との再交渉を求める動きを含めて三木谷氏に同調する可能性もある。 カタール行きをかけた大事な戦いを前にして、新型コロナの第6波に対する脅威と新シーズンの開幕を控えた現実との間で、日本サッカー界が大きく揺れ始めた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)