スズキ元会長・鈴木修氏「悪性リンパ腫」により逝去 前兆となる“3つの初期症状”を医師が解説
悪性リンパ腫の治療法
■薬物療法 悪性リンパ腫の治療で中心となるのが薬物療法です。薬物療法では抗がん剤や分子標的薬、ステロイドが用いられますが、どの薬を使用するかはリンパ腫の種類や進行度に応じて様々です。 一般的な治療法は、複数の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法で、これによりがん細胞を効果的に攻撃します。例えば、日本人に多い非ホジキンリンパ腫のひとつである、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫では5種類の薬(リツキシマブ、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)の投与が行われます。これはR-CHOP療法と呼ばれます。このなかで、リツキシマブが分子標的薬に該当しますが、最近では、ポラツズマブなど新たな薬も登場し、治療の進歩がみられます。治療開発が盛んに行われており、治療の進歩が期待されています。化学療法の代表的な副作用は吐き気・悪心、脱毛、粘膜炎(口内炎など)、骨髄抑制(血球細胞の減少)、感染症の他、悪性リンパ腫治療に特徴的なものとして、腫瘍が壊れることで起こる腫瘍崩壊症候群などがあります。 抗がん剤治療のときには吐き気止めを併用する他、必要に応じて、栄養補給やリハビリテーション、緩和ケア(痛みの緩和など)も並行して行い、治療がうまくいくことをサポートしていきます。 ■放射線療法 放射線療法は、がん細胞を破壊するために放射線を使用する治療法です。薬物療法が全身に効く治療であるのに対し、放射線療法は局所病変(がん細胞の集まっている部分)を狙い撃ちするのが得意です。放射線療法は薬物療法と併用して用いたり、病変が小さく、進行も速くない一部の悪性リンパ腫の場合は、放射線療法単独で治療したりすることもあります。 放射線療法はリンパ腫の完治目的以外にも、腫瘍を小さくすることで一時的に苦痛を和らげる緩和目的の照射、造血幹細胞移植時の拒絶反応抑制と腫瘍縮小目的の全身照射などがあります。 ■造血幹細胞移植 抗がん剤投与や放射線治療を強力に行うと、正常な臓器も大きなダメージを負ってしまいます。特に骨髄の造血幹細胞は影響を受けやすく、免疫力低下や貧血、出血傾向(あざが出来やすい、血が出やすい)といった症状が出てしまいます。この問題への対処法の一つが造血幹細胞移植です。 造血幹細胞移植には自家移植と同種移植の2種類があります。自家移植では事前に患者さん自身の幹細胞を採取し保存してから、大量の抗がん剤投与や放射線治療を行い、治療後に保存しておいた自身の幹細胞を身体に戻します。そうすることでより強力な治療を行うことができます。悪性リンパ腫の治療では、この自家末梢血幹細胞移植を用いることが多いです。対して、同種移植は他の人(ドナー)からの幹細胞をもらって使用する方法になります。ドナーになれるのは白血球の型(HLA)が患者さんと同じ人であり、兄弟姉妹であれば4分の1の確率で同じ型なので、兄弟姉妹間での造血幹細胞移植がしばしば行われます。