狭山工業高校のオリジナル紅茶「狭紅茶」が量販店で初の販売、キリンビバレッジと高校生の連携が生む地域活性化の一歩
埼玉県立狭山工業高等学校(通称:狭工)の生徒が手がけるオリジナル和紅茶「狭紅茶」が11月16日と17日、地元スーパー「ヤオコー北入曽店」で初めて販売された。このプロジェクトは、「午後の紅茶」を展開するキリンビバレッジの首都圏統括本部の支援を受け、狭山地域の紅茶文化の発展と地域活性化を目的に進められてきたもの。
〈「狭紅茶」誕生の背景〉
2017年、狭山工業高校の電子機械科では、地域資源である狭山茶を活用した紅茶づくりを課題研究としてスタート。学校の略称「狭工」と紅茶を掛け合わせた「狭紅茶」という名称で、紅茶文化の新たな可能性を探求してきた。 同校教諭でプロジェクトリーダーを務める原嶌茂樹氏は、「地域の魅力を引き出す活動として紅茶づくりを選びました。地元農家との連携や、生徒たち自身が設計した発酵機などを通じ、ものづくりの力を活かした取り組みです」と話す。 生徒たちは、茶葉の手摘みから発酵、乾燥までの工程を一貫して手がけ、特に発酵機の改良や発酵工程の温度・湿度管理に注力している。この技術が評価され、2023年には日本茶品評会で審査委員奨励賞を受賞している。
〈キリンビバレッジの支援で広がる可能性〉
2022年、フランスの紅茶コンテストへの挑戦を目指す狭工の活動を知ったキリンビバレッジが協力を開始。紅茶づくりのノウハウや淹れ方の技術を提供し、生徒たちの品質向上を支援した。 キリンビバレッジ首都圏統括本部ブランド推進部長の高井美奈氏は、「若い世代に紅茶文化を広める活動として、狭紅茶を支援することは大きな意義があります。地域との連携で、地元産業の活性化と紅茶市場の拡大につなげたい」と語る。今回の量販店での販売も、同社のネットワークと地域密着型の支援が実を結んだ格好だ。
〈量販店での初販売イベント〉
販売イベントでは、狭工の生徒たちが来店者に直接「狭紅茶」を紹介。ティーバッグ商品「おくはるか」「ジャバティー」、リーフ商品「おくはるか」の計400個を販売し、多くの地元住民が足を運んだ。さらに、キリンビバレッジのキッチンカー「The TEA LOVER」も出店し、紅茶アレンジメニューやフードペアリングの提案を行うなど、紅茶の魅力を発信した。 生徒の一人である3年生の豊川洋斗さんは、「紅茶づくりの難しさと楽しさを実感し、接客を通じて多くの人と関わる経験ができました。この活動は、夢に向かう自信にもつながります」と語る。
〈地域とともに進む未来〉
「狭紅茶」は、地域と学校、企業が協力し、持続可能な社会づくりを目指すモデルケースとなっている。原嶌教諭は、「紅茶を通じて地元産業を盛り上げたい。ゆくゆくはスーパーの地元産コーナーに常時狭紅茶を並べられるようにしたい」と今後の展望を話した。 キリンビバレッジも、和紅茶文化のさらなる発展を支援する構えだ。「生徒たちがつくる紅茶が、地元から全国へと広がり、より多くの人に愛される商品となるようサポートを続けていきます」と高井氏は語る。 「狭紅茶」がつなぐ地域の絆と未来。その一杯がもたらす温もりは、地元だけでなく日本全体に広がりそうだ。
食品産業新聞社
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