ニュースでは伝わらない 戦乱のアフガンで確かに続く日常
●今はなき栄華
アフガニスタン中央部、世界遺産に指定されているバーミヤン渓谷。サンスクリット語で 「光り輝く土地」を意味するこの場所には、イスラム教が伝わる以前、 仏教徒 が篭って修行していた石窟が今も無数に残る。石窟はアリの巣のように内部で繋がっており、かつてはカラフルな壁画で彩られていた。630年に唐の三蔵法師が訪れた際、大仏は装飾によって金色に光り輝き、1000以上もある石窟で数千人の僧が居住していたという。しかしこの地にそびえ立っていた高さ約50メートルの2つの大仏石像は、2001年、タリバンによって爆破されてしまった。 渓谷の岸壁を這うようによじ登り、仏像が彫られた頂上にたどり着くと、バーミヤンの美しい谷が眼前に広がった。かつての仏教徒たちも大昔に眺めたであろう光景に、まるでタイムスリップしたかのような感覚に襲われた。夏には谷に沿って木々が生い茂る緑の絨毯が広がり、市場にはたくさんのフルーツが並ぶ。地元の骨董品屋には、かつてのさまざまな王朝時代の物と思われる硬貨や石像の破片などが並んでいた。
●人々を癒やす水辺
バーミヤンから車でさらに数時間進んだ山奥にある標高3000メートルのバンデアミール湖。5つの湖からなり、晴れた日には湖面が真っ青になるため「砂漠の真珠」と呼ばれる。一帯は2009年にアフガニスタン初の国立公園に指定された。 周囲には未だに無数の地雷が残るが、観光で訪れた人々で賑わっており、休暇中の多国籍軍の兵士たちもピクニックに来ていた。湖面ではスワンボートに乗って遊ぶ人たちや、泳ぎ回る男たち、持ち込んだ石けんで体を洗う人の姿が見られた。木は一つも生えておらず、よくこんな場所に人間が家を建てて生きているものだと、アフガニスタンの田舎に行くと思わされる。今まで訪れたどんな国よりも自然状況や地形が険しく、本当に火星のような砂と岩の大地だ。しかし、そんな中にも人々を癒す川や美しい湖があり、そんな場所を見つけた時には大人も子ども童心に戻って無邪気にはしゃぐのだ。