ニュースでは伝わらない 戦乱のアフガンで確かに続く日常
●文明の交差点
美しい花をつけた畑の中を走り回る子どもたちと、民族衣装に身を包み歌う少女たち。未だ戦乱が続き、首都カブールでもテロが相次ぐ状況だが、アフガニスタンには、かつて文明の交差点として、ヘレニズム、仏教、イスラムなどの影響を受けた豊かな文化が花開いた。アフガニスタン各地に残るそうしたさまざまな歴史は、世界から多くの旅行者を惹きつけた。 上述のバーミヤン仏教遺跡群は2003年、世界遺産に登録された。東京・上野などの博物館で、アフガニスタンやパキスタンで出土したブッダの石像などを目にしたことがある方も多いのではないだろうか? 天皇皇后両陛下も1971年にバーミヤンの石仏像を訪れている。
アフガニスタンは自然も豊かだ。アニメ映画「天空の城ラピュタ」に登場する飛行石のモデルはアフガニスタン原産の鉱石ラピスラズリといわれる。北部にそびえる世界有数の標高を誇る山々にスキーリゾートも建設されていたという。 地理的に東西の要所であるため、太古の昔から戦乱に巻き込まれ、いろいろな民族によって支配されてきた地域だ。だが、人々は素朴で優しい。日本製の車や工業製品、各地でのNGOの活動などによって日本人に対する感情は良好で、旅の途中、私が日本人だと分かると何度もお茶や食事のために家に招かれた。 これまでに3度アフガニスタンを訪れたが、戦争のイメージよりも、雄大な自然や人懐っこい人々、圧倒されるような遺跡の姿が強く印象に残っている。いつの日か平和が訪れ、一般の旅行者がアフガニスタンの悠久の歴史と文化、そして人々との交流を楽しめる日が戻るのを願ってやまない。
-------------------------------- ■鈴木雄介(すずき・ゆうすけ) フォトグラファー。1984年千葉県生まれ。音楽学校在学中に好奇心からアフガニスタンを訪れ、そこで出会ったジャーナリストに影響を受けて写真を始める。2010年に渡米し、ボストンの写真学校在学中より受賞多数、卒業後はニューヨークを拠点にフリーランスとして活動中。伝えられるべきストーリーや出来事の中に潜む人々 の感情を、写真という動かないメディアに焼き付け、人に伝えるのを目標としている