今、修学旅行に何が起きているのか? オーバーツーリズムの影響から、海外の旅費高騰まで、最新事情を整理した【コラム】
いま、海外修学旅行はどうなっているか
旅行費用の高騰は、特に海外修学旅行に顕著に現れてきています。 コロナ禍によって実施できなかった海外修学旅行は、現在、私立学校を中心に再開されるようになっています。公立学校でも、語学研修のように希望者を募って実施する「海外研修旅行」は実施されはじめていますが、実施学年の生徒全員が参加することを原則とする海外修学旅行の再開は、かなり厳しいという現状があります。これは、航空運賃や燃油サーチャージの高騰に加え、円安によって旅行先での宿泊費・食費・交通費などが割高になっているからなのです。学校の教育目標に「国際交流」や「異文化理解」「多文化共生」などを掲げている学校にとっては、海外修学旅行は他に代えがたい大切な教育活動なのですが、それが実施できないのは大きな問題だと思います。 かといって、保護者の負担を考えるなら、そう簡単に積立金の額を増やすわけにはいきません。今年度の「修学旅行実施基準」を見ると、費用上限の額を見直した自治体もありますが、それほど大幅に上がってはいません。
旅行会社の人手不足と人材不足
修学旅行は、各学校がそれぞれの教育目標を踏まえて計画するオーダーメイドの旅行ですので、旅行会社が企画する一般向けの団体旅行より旅行費用は高くなってしまいます。それなら、旅行先や宿泊日数を変えたり、活動内容を工夫するなどして費用を抑えたらどうか、という意見もあるかと思います。 学校としても、宿泊先をホテルや旅館から民泊に変えるといった対応はしているのですが、修学旅行そのものの内容を検討するための情報が、今、学校にあまり入ってこないという事態が起きています。その主な要因は、旅行会社の人手不足・人材不足にあります。これが第2の問題です。 コロナ禍によって旅行需要が激減し、旅行会社から離れる社員が続出したことは皆さんもご存じのことと思います。現在は、インバウンドも含め一般の旅行需要は急速に回復していますが、旅行会社は少ない人手をそちらのほうに割かなければならず、結果としてエージェント1人が担当する学校数が大幅に増えてしまいました。そうなれば、エージェントが学校を訪問する機会は減ってしまい、新しい情報もなかなか学校に届かないということになるわけです。 今、旅行会社は多くの社員を採用するようになっていますが、経験豊富なベテランのエージェントが抜けてしまった穴を埋めることは難しいのが現状です。学校からは、若手の担当者にアドバイスを求めても的確な提案を持ってこない、という声が多く聞こえてきます。「人材不足」というのは、このことです。旅行会社のエージェントが学校の先生たちに適切な情報を伝え、意見を交換しながら旅行先や活動内容を検討していくのが好ましいあり方ではないかと思うのですが、どうでしょうか。