「AQUOS R9 pro」レビュー、複眼カメラにシャッターキーも搭載 いよいよ最強カメラスマートフォンへ
2024年12月13日に、シャープはフラッグシップモデルとなる「AQUOS R9 pro」を発売。MNOとしてはNTTドコモの新機種として提供されるほか、オープン市場向けモデルも展開されている。 AQUOSのハイエンドシリーズに位置するAQUOS Rシリーズは、2021年に発売された「AQUOS R6」より、ライカと協業した、1インチセンサー搭載のカメラを特徴としている。当初は、1インチセンサーのじゃじゃ馬っぷりに振り回され、シャッターラグがあり、特定のシーンでのみ活躍できるような端末だったが、協業を重ねていく中で、ラグの改善、ライカらしいフィルターの追加といったアップデートが施されており、デジカメライクに写真を撮影できるスマートフォンとしての地位を築きつつある。 AQUOS R9 proでは、際たる特徴であるカメラをよりパワーアップさせ、多様なシーンに適応できるようになっている。 ■ 超広角、望遠レンズも搭載して盤石となったカメラ AQUOS R6以降のAQUOS Rシリーズでは、大型センサーのメインカメラのみを搭載してきた。1つのカメラで、全ての撮影パターンを賄うようなイメージだろう。 AQUOS R9 proでは、約5030万画素 1/0.981インチ 23mmの標準カメラに加え、約5030万画素 1/2.5インチ 13mmの広角カメラ、約5030万画素 1/1.56インチ 65mmの望遠カメラも備える。公式で広角カメラと表現されているが、一般的なスマートフォンで言う超広角カメラだと思ってもらえれば、間違いないだろう。 これまで1つのカメラで全てのシーンに対応してきたが、ズーム倍率が低いなど、どうしても弱点は垣間見えた。AQUOS R9 proではこの弱点を、複数カメラの搭載という形でカバーし、ライカ協業の大型センサーを維持しながら、よりスマートフォンらしく、1台で多くの撮影シーンに対応することを目指している。 広角カメラでの撮影は、ライカとの協業を積み重ねてきたAQUOS R6以降のコンセプトを踏襲し、高精細とライカらしいエモさを重視した仕上がりに。デジカメの撮れ味にかなり近く、パキッとした色合いと、独特なボケ感が特徴となる。 コンセプト自体は過去モデルを踏襲していることを感じるが、1/0.981インチというセンサーサイズの大型化、AIを活用してホワイトバランスの精度が向上した14chスペクトルセンサーによるアップデートもしっかりと感じられ、色味の表現は非常に優秀。一方で、AF速度、精度はそこまで優れているとは言えない印象で、ズーム倍率を切り替えたり、動く被写体をとらえようとすると、手ぶれが激しく見られ足り、使いにくさを感じることがある。 新たに搭載した望遠カメラは、1/1.56インチセンサーを搭載。スマートフォンの望遠カメラとしては、こちらもかなり大きなセンサーになっている。望遠カメラでも、光学式手ブレ補正に対応しているのも、大きな見どころだろう。 望遠カメラの焦点距離65mmは、人物撮影の際に、人間が見る視野とほぼ同じになっており、ライカが推奨するものとのこと。望遠カメラでも、歪みの少ない、きれいな写真が撮影できるのが強みだ。 光学ズームは2.8倍、デジタルズームは最大20倍まで可能。最大までズームすると、それなりに画質の劣化も見られる、というより、上述した手ぶれの影響が大きく出る。カメラアプリを起動すると、0.6倍、1倍、3倍の倍率に切り替えるショートカットが用意されているのに加え、倍率の項目をワンタップすれば、スライドで倍率をスムーズに切り替えられる。 カメラスペック、および作例について紹介してきたが、AQUOS R9 proのカメラ機能において重要なのは、本体側面にシャッターボタンが搭載されている点だろう。デジカメに使われるシャッターキーがそのまま流用されており、半押しでのフォーカス機能など、デジカメライクな使い方も可能となる。 スマートフォンに搭載されるシャッターキーといえば、Androidで言えばXperiaシリーズが有名。iPhoneでも、2024年のiPhone 16シリーズにカメラコントロールという、シャッターキー風のセンサーが搭載されているが、デジカメ特有の、カチッとした押し心地は、AQUOS R9 proならでは。 iPhone 16 Pro/16 Pro MaxもアップデートでAFロックに対応したが、深く長押しすると動画撮影に切り替わってしまうなど、少々使いにくさがある。デジカメライクなシャッターキーという意味では、AQUOS R9 proが頭ひとつ抜けている印象だ。 また、音量ボタンではズーム倍率の調節ができるのもポイント。本体を横持ちすれば、ボタンだけで写真撮影が完結するのが魅力だ。音量ボタンは、明るさの調節といった別項目にも変更できる。 超大型センサーの搭載や、望遠カメラ、超広角カメラの搭載など、フラッグシップのカメラスマートフォンとして盤石のアップデートを見せるAQUOS R9 proだが、使い勝手を向上させる大きなポイントは、やはりシャッターキーの搭載だと感じる。 優秀なカメラ機能をより便利に使えるようになったことで、以前はじゃじゃ馬のような扱いにくさもあったAQUOSのフラッグシップモデルが、多くの人におすすめしたい端末に進化している。 一方、カメラを使っていて気になるのが、ポートレートや夜景の撮影をすると、AI処理を施す時間に「保存中」と表示される点だ。データ量の多い写真をバックグラウンドで処理するのは、近年のスマートフォンとしては珍しくないが、はっきりと保存中の文字が表示され、その間は操作ができないとなると、見栄え的には少々野暮ったく感じる。操作性もよく、仕上がりも綺麗なカメラであるだけに、見せ方にももう一工夫欲しいと個人的には感じる。 ■ レザー調の背面とフラットな大型ディスプレイ AQUOS R9 proのカラーバリエーションは、ブラックの一色のみ。ユーザー視点で言えば、せめて2色は本体カラーが欲しいというのが本音だが、台数的な売り上げはそこまで見込めないフラッグシップモデルにおいては、出てきただけでもありがたいとも言える。優秀なカメラを強調した、デジカメライクなデザイン自体は、ほかにない所有欲を満たせるので、個人的には大変気に入っている。 背面素材はレザー調になっており、触り心地としては車のダッシュボードなどに近い。指紋の付着は基本的に見られない。一方で、カメラレンズがかなり大きく、背面の半分近くまで及ぶため、本体を握りしめるように持つと、指がレンズに触れてしまうことがある。デジカメに近いカメラを搭載した代償ではあるが、慣れるまでは持つのに少し苦労する。質量も約229gとヘビー級なのも、使い方に気をつけたいポイントだ。 また、日常的に使用するのであれば、むき出しのカメラレンズを保護したくなるので、ケースの装着を推奨したい。シャープ公式ストアでは、ショルダーストラップ付のケースが9900円で販売されているので、こちらを別途購入するか、サードパーティ製のケース、レンズカバーを探すのがおすすめだ。 ディスプレイは約6.7インチの大画面で、解像度QHD+(1440×3120)。AQUOSシリーズの特徴でもある、Pro IGZO OLEDディスプレイを搭載している。リフレッシュレートが1Hz~120Hzの可変式で、疑似的に240Hzの体験ができ、フラッグシップモデルにふさわしい、サクサクの操作性が楽しめる。 ディスプレイはフラットで、四隅が比較的角ばったデザインになっているため、表示領域を広く確保できる。カメラが特徴的なデバイスではあるが、高いディスプレイ性能を活かし、ゲームアプリや動画視聴をヘビーに楽しむこともできる。 本体側面には、シャッターキーのほか、音量調節ボタンと電源ボタンを搭載。SIMトレイ、充電ポートは底面にまとめられている。SIMトレイは、爪で引っ掛けて取り出せるようになっているため、SIMピンがいらないのも、地味ながら便利なポイントだ。なお、前モデルまで搭載されていたイヤホンジャックは、今回より非搭載となった。 ■ 普段使いにも文句なしの高性能 搭載チップセットはSnapdragon 8s Gen 3となる。最上位モデルの廉価版という位置付けにはなるが、使っていて使用感に不満が出るシーンは基本的にないだろう。原神といったヘビーなゲームで、グラフィック性能を最高にしていても、極端に動作が不安定になるシーンも見られなかった。 メモリは12GB、ストレージは512GBで、最大12GB分のストレージを仮想メモリとして使用する機能も搭載。Wi-Fi 7やBluetooth 5.4に対応するなど、フラッグシップモデルらしい構成になっている。 バッテリーは5000mAhで、最大32Wでの充電に対応。Qi規格のワイヤレス充電や、チャージシェア機能も利用できる。バッテリー容量は、本体サイズを考えると、際立って大容量とは言えないが、省電力性能に優れたPro IGZO OLEDディスプレイのおかげか、電池持ちは比較的いい印象だ。 もちろん、長時間カメラアプリを起動していると、それなりにバッテリーを消耗するので、デジカメライクにAQUOS R9 proを使いたい場合は、モバイルバッテリーを持ち歩くといった工夫が必要になる。 防水防塵性能は、IPX5/IPX8、IP6Xに準拠。ただし、先にも触れた通り、使っているとカメラレンズの出っ張りが気になり、傷がつくのがどうしても心配になるので、ケースの併用がおすすめだ。 生体認証は顔認証と指紋認証に対応。指紋認証は超音波式になっており、広い認識範囲と速度が魅力的。他のスマートフォンにもぜひ搭載して欲しいと思うほど、使っていて快適な機能だ。 そのほか、SIMはnanoSIMとeSIMのDSDVに対応。AQUOS独自の、Payトリガーや迷惑電話対策機能なども利用できる。当然、おサイフケータイ機能も利用可能だ。OSのバージョンアップは最大3回、セキュリティアップデートは5年となっている。 ■ 販路、価格 AQUOS R9 proは、シャープ公式サイトでの取り扱いのほか、MNOとしてNTTドコモが取り扱う。公式ストアでの販売価格は19万4700円、純正ショルダーストラップケースは9900円で販売される。 ドコモオンラインショップでは、一括払いで21万1970円。いつでもカエドキプログラムを使用した場合は、1~23回目が5083円となり、実質11万6930円で利用できる。
ケータイ Watch,佐藤 文彦