慶應大卒“モーレツ社員”の46歳エリートサラリーマン、数年前にメンタルを病んで休職…療養中に気づいた「定年後の自分」の危うさ【インタビュー】
休養中に“手に入れた”もの
石井:ただ、この休養が自分にとっては良い時間でした。冷静に「自分がいる会社」と「会社以外のこと」をゆっくり考え直すことができたからです。 そこから、たどり着いた考えは「会社という組織の中だけで過ごすのはもったいない」「もっともっと何かできるはずだし、それを自分もやっていきたい」ということでした。「少し休んで回復できたら、会社の仕事はもちろん、それ以外のこともやっていきたい」と思い、復帰前後からそれまでにはしていなかったことをいろいろと始めるようになりました。 ――どんなことを始められたのですか? 石井:休養中もですが、少し体調が戻ってきてから、様々なセミナーに毎日のように通うようになりました。 まずはIT系ですね。私の会社もIT系の部類に入るのですが、職場で働いているうちは、目の前の仕事に集中するあまり、未来のテクノロジーのことまでは考えられていなかったと思います。周りの社員も同じだったかもしれません。 そのため、IT系のセミナーに参加し、そこで得た最新の取り組みや情報を会社にフィードバックし、もちろん自分自身にも活かすことができれば良いなと考えてのことでした。 実際、今では当たり前になりつつある「IoT」に対しても、当時の私は言葉では理解できていても、どんな技術が使われ、どのように生活に役立っていくのか、具体的なことはよく分かっていませんでした。 それを私が学び、さらに社内の業務にも取り入れることができたら、自分も含めて社員全体でも最新技術の活用方法を体感できるわけで、その理解度も加速するのではと考えていました。 「リスク毛嫌い」の風潮を逆手に…復帰後は業務改善を“トライアル” ――日本の社会全体では、“新しいことへの取り組み”に及び腰になる先入観がまだありますが、社内ではIoTの活用を受け入れてもらえたんですか。 石井:確かに、新しいことを始める際には失敗する可能性も大きいため、そのリスクを背負うことを毛嫌いする風潮は会社に限らず、まだ日本の社会全体にあるのかもしれません。「総論賛成・各論反対」とも言えるかもしれませんね。 こういった風潮だからか、「トライアル」という言葉をよく耳にする気がします。要は「斬新なことをいきなりやるのではなく、小っちゃくやって様子を見よう」ということです。 このトライアルを逆手にとり、私は自分が担当する業務改善をIoTの力で実現させてみたいと考えました。 具体的に言うと、在庫管理や固定資産管理にIoTを取り入れたわけです。それまでは帳簿を片手に紙とペンでいちいちチェックしていましたので、その労力削減という目的を伝えると、すぐに受け入れてもらえました。 その点では受け入れていただいた当時の上司には感謝しかないのですが、今で言うDX(デジタルトランスフォーメーション)の先駆けみたいなことで、やってみると思った通りそれなりの達成感があり、自分としてはやりがいを持て、自信の回復にまでつながる出来事だったかと思います。
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