JR東「分かりやすい運賃にします」でなぜ“大幅値上げ”になるの? 格差を生んだ「4つの運賃区分」見直す意味 でも関西は“そんなに値上げしない”
見直しが必要な「国鉄基準」はまだまだある!?
国鉄時代からJR各社に引き継がれた幹線と地方交通線の区分については、市販の時刻表の地図を見るのがわかりやすいでしょう。幹線は路線が黒い実線で、地方交通線は水色の実線で表記されています。 ただ、今と照らして、この国鉄時代に設定された基準との齟齬が顕著な路線もあります。東京都の八王子から群馬県の高崎(倉賀野)を結ぶJR八高線です。 八高線は1981年に導入された基準により、今なお、都内唯一の地方交通線となっています。地方交通線であることから電車特定区間に組み込まれることもなく、接続する中央線や青梅線はもとより、一体に運行される川越線とくらべても大きな運賃格差が生じています。 箱根ケ崎駅がある東京都瑞穂町では、箱根ケ崎駅の利用者が1日平均4500人に迫ることからも、地方交通線から幹線への昇格を要望することで、この格差の是正をJR東日本に求めています。
「電車特定区間」も「東京山手線内」も国鉄のまま
幹線と地方交通線が分けられた3年後の1984(昭和59)年に設定されたのが、「国電区間」です。JR発足後に「電車特定区間」へ名称が改められました。 短距離利用が多い都市部の通勤・通学エリアの利便性を向上することなどを目的として、国電区間は“東京附近”と“大阪附近”の2か所が設定されました。同時に「大阪環状線内」も設定されました。 いずれも幹線より割安な運賃が設定され、さらに大阪環状線内については、それ以前から設定されていた「東京山手線内」と同様、国電区間よりも割安な運賃となり、分割民営化後もこの適用のまま、JR東日本とJR西日本に受け継がれました。 しかし、2024年に入り、両社とも、この運賃区分にメスを入れることとなりました。
JR西と東で狙いが全然違う!?
まずJR西日本が2024年5月15日、大阪環状線内の区分を廃止し、大阪附近の電車特定区間の拡大を発表しています(導入は2025年4月1日予定)。 これには、国鉄以降に京阪神エリアの直通ネットワークが拡大したことなどを踏まえ、「同じレベルの輸送サービスを提供しているエリアにおいて運賃体系を統合」する狙いがあるとしています。また、一連の運賃改定は「当社の運賃収入は全体としては増収とならない想定」とも。 一方のJR東日本は、東京山手線内と東京附近の電車特定区間の両方を廃し、幹線に統合することを選びました(導入は2026年3月予定)。 同社はこれら区分について、「現在では他の鉄道事業者の運賃改定により、運賃格差が逆転又は縮小し、当該エリアの設定意義が薄れている」とし、これまでの多額の投資と持続的なサービス向上に対し、「一定程度のご負担をお願い」と率直につづっています。 現行の運賃が国鉄末期に設定されたままであるというのも、とても稀有なことだと感じます。40年以上も前に設定された区分であるからこそ、現在の利用状況や景気に合わせて、変化せざるを得ないのは当然のことかもしれません。
真柄智充(鉄道や旅の編集者)