【“マルキの闇”裁判終結へ㊥】兵庫県警機動隊員連続自殺の真相 警察組織による「パワハラ」隠ぺい たどり着いた真実と壁
■「父さん母さん 先にいくことを許してください」
木戸巡査は、A隊員への遺書のほかに、両親や婚約者に宛てた遺書を残していた。 木戸大地巡査(当時24)の遺書 「父さん母さん 先にいくことを許してください。相談できなくて申し訳ありません。原因はうつを相談できなかった自分にあります」 遺書からは、木戸巡査が精神的に追い詰められていたことがうかがえる。 父・一仁さんは「機動隊での悩みや辛さを誰にも言えなかった。それをわかってやれなかった自分がなさけない。親なのになぜ子どもの気持ちを深くわかってやれなかったのか…。大地、ごめんなって、いつも謝っているんです」と自らを責めた。
■カウンセリングの翌日に自殺
2015年9月28日に兵庫県警の機動隊員、山本翔巡査(当時23)が自殺したことを受け、機動隊では隊員らを対象としたカウンセリングが実施された。その際、木戸巡査は「自殺という手段もあるのか。機動隊から逃げられてうらやましい」と話していたという。 しかし、山本巡査の自殺直後にも関わらず、警察内部で木戸巡査のこの発言が重く受け取められることはなく、特段の対応は取られなかった。そして、このカウンセリングの翌日、木戸巡査は自ら命を絶った。
■「自殺へ追い込んだ人間がいる」
息子の死から1か月が過ぎたころ、父・一仁さんの元に機動隊の同僚を名乗る人物から電話が入った。 「警察内部に木戸巡査を自殺へ追い込んだ人間がいる」という内容だった。 しかし「組織の人間である以上、詳しいことは話せない」と言って電話は切られた。父親は、真相が知りたいと同僚たちに連絡を取ったが、誰もが「答えられない」と返答。中には、木戸巡査の父親であることを伝えると、無言で電話を切る隊員もいた。
■兵庫県警は"かん口令"
私は、当時の状況をよく知る警察内部の人間に話を聞く必要があると考え、自殺した2人が所属していた小隊のトップに取材を申し入れた。 「機動隊の中で一体何が起きていたのか」 「機動隊内でパワハラやいじめはなかったのか」 「隊長を務めていた隊で2人の若い警察官が相次いで命を絶ったことをどう受け止めているか」 いくら質問しても小隊長は「何も話すことはできない」と繰り返すばかりだった。 当時、兵庫県警では、機動隊での連続自殺について「遺族やマスコミには何も話すな」という厳しい"かん口令"が敷かれていたという。「いじめ・パワハラなし」という調査結果も、遺族に“口頭”で報告するなど、連続自殺に関する内部情報が世に出ることがないよう徹底していた様子がうかがえる。