【“マルキの闇”裁判終結へ㊥】兵庫県警機動隊員連続自殺の真相 警察組織による「パワハラ」隠ぺい たどり着いた真実と壁
■A隊員は「体調不良で休んでいる」
父・一仁さんは、息子が命を絶った部屋に花を供えた後、機動隊の幹部に「A隊員と直接会って大地との間に何があったのか聞きたい」と迫った。 しかし、機動隊の幹部は「今日は体調不良で休んでいる」と断った。 父・一仁さんが「私たちが来るのに合わせて休んだような感じがしますね」と詰め寄ると、その幹部は「それは絶対にない」と強い口調で断言した。 それ以降も木戸巡査の両親は、広島から神戸に何度も足を運び「A隊員」との面会を求め続けた。しかし、その度に「体調不良による欠席」を理由に断られた。そんな偶然があるだろうか…。そして「A隊員」は、遺族の知らぬ間に機動隊から異動となり、行方をくらました。
■"夢"の職場で選んだ「死」
私は広島市西区にある木戸大地巡査(当時24)の実家を訪ねた。 3人兄弟の二男として生まれ、幼い頃から明るく活発なスポーツマン。まっすぐで曲がったことが嫌いなところは父親ゆずりだったという。 父・一仁さんが、小学校の運動会のビデオを見せてくれた。木戸巡査は、児童会長として校旗をもって行進し、開会式では「負けても勝っても楽しい運動会!」と大きな声で宣誓。全校生徒がそれに続くと「声が小さいのでもう一回やります!」と言って、先生や保護者らを笑わせた。真面目さとユーモアを兼ね備えた木戸巡査の人柄が伝わってくる。 地元・広島の高校を卒業後、兵庫県警に入り、幼い頃からの夢を叶えた。交番勤務を経て機動隊に配属され、高い能力を買われて特殊捜査班にも抜擢されるなど、将来を期待される人材だった。
■「父さんと母さんのような夫婦に」一方「機動隊は腐りきっている」
プライベートでは結婚を控え、婚約者と暮らすための新居も決まっていた。 自殺する2週間前には、婚約者とともに広島の実家へあいさつに訪れ、その翌日から、両親と婚約者と4人で四国への温泉旅行に出かけた。その際「父さんと母さんのような夫婦になりたい」とはにかむ息子を父・一仁さんは、頼もしく思っていた。 しかし、温泉につかりながら「最近、体調が悪くておしりから出血することが多い。精神的にもつらい」と打ち明けたという。父・一仁さんが「何か悩み事でもあるのか」と聞くと、「そんなのないよ」と強がった。 また、別の日には、大声を出して泣きながら「機動隊の中は、腐りきっている。おれがこの組織を絶対に変えてやる」と訴えたこともあった。しかし、機動隊のどこが「腐りきっている」のか、警察組織の内部事情については詳しく話してくれなかったという。