【“マルキの闇”裁判終結へ㊥】兵庫県警機動隊員連続自殺の真相 警察組織による「パワハラ」隠ぺい たどり着いた真実と壁
■兵庫県警が真っ黒に塗りつぶした「真実」
2016年3月、兵庫県警は遺族の要請に応じ、内部調査の結果を書面で開示した。私は、木戸巡査の遺族から「調査結果が届いた」との一報を受け、再び広島へ向かった。 父・一仁さんが、封筒から調査結果を取り出す。2か月半かけて行われた約130人の聞き取りは、たった4枚の紙にまとめられていた。しかも、遺書で名指しされた「A隊員」を含む同僚からの聞き取り内容は、全て真っ黒に塗りつぶされている。その上で「自殺した原因を特定することはできなかった」と記されていた。 父・一仁さんは、「最後に大地を追い詰めたであろう彼の証言、一番肝心なところが全て真っ黒というのは、あまりにも遺族を馬鹿にしているとしか思えない」と憤った。その後も、遺族は兵庫県警に情報の開示を求め続けたが、手元に届くのは、黒塗りの文書ばかりだった。
■立ちはだかった組織の壁
翌2017年6月、しびれを切らした木戸巡査の父・一仁さんは、警察幹部に黒塗りの部分を開示するよう直談判するため、兵庫県警本部へ向かった。警察という大きな組織を相手に一人で立ち向かっていく父親の背中からは、警察官という仕事に誇りを抱いていた息子の名誉を何としても守りたいという強い思いが伝わってくる。 しかし、その父親を前にした兵庫県警幹部の対応は酷いものだった。これは、父・一仁さんが、録音したその時のやり取りの内容だ。
■兵庫県警幹部「我々は組織で動いている」
木戸巡査の父・一仁さん 「聞き取りをやった結果、やましいものがないのであれば、その結果を開示してください。わかりますか? この悔しさ。1週間に2人も現役の機動隊員が亡くなっているんですよ。本当に組織を改善する意思があるのであれば、情報を開示してください。お願いします、これだけです」 兵庫県警幹部① 「我々は組織で動いている。決まりで動いている。それをないがしろにしろってことですか?」 兵庫県警幹部② 「規則にのっとって動いているので、お父さんが言う通りにしたら規則を破る、犯罪を犯すしかないんです」 木戸巡査の父・一仁さん 「人間の命より規則の方が重いんですか、大切なんですか」 木戸巡査の父親の訴えに、兵庫県警の幹部は「組織上の決まりで黒塗りの部分を開示することはできない」と繰り返すばかりだった。