【オートバイエッセイRider's Story】鈴鹿8耐でGSX-Rが教えてくれた「理由は無くていい」
-オートバイは、たくさんのことを教えてくれました- バイク小説を二十年以上に渡り書き続けてきた著者が、オートバイに教えてもらったことをエッセイというスタイルで綴る。 二輪誌で三年半ほど連載していたオートバイエッセイをまとめた著書「Rider's Story オートバイが教えてくれた」より、一部を掲載。 【画像】オートバイエッセイRider's Story関連画像をギャラリーで見る(4枚) 文/Webikeプラス 武田宗徳
鈴鹿8耐でGSX-Rが教えてくれた「理由は無くていい」
────────── 生まれて初めてのレース観戦 ────────── レースに興味がなかった。理由はよくわからない。スポーツ観戦もそれほど熱心でないから、競い合うこと自体に興味が持てないのかもしれない。レースの生観戦はもちろん、テレビで観ることもなかった。 バイク小説を書くようになって知り合った人とよく話題になるのが、鈴鹿8時間耐久レースだった。もちろん存在は知っていた。かなり熱狂的に盛り上がっていた時代もあったし、それを舞台にした小説や物語も多数ある。数年前から、観てみたい、体感してみたい、と思うようになっていた。 そんなタイミングで、知り合いがレースに参戦する、という情報が入ってきた。サポートするメカニックも知り合いだった。 2019年の夏、僕は生まれて初めてオートバイレースを観戦することになった。念願の鈴鹿8時間耐久レースだ。 7月26日の金曜から28日の日曜まで3日間、車中泊での強行観戦。この初めてのレース観戦を終えたら物語を書こうと思っていた。レースを舞台にした短編小説を、一つや二つは書けるだろうと、その時は軽い気持ちで思っていた。 それにしても、応援するチームがあって良かった。恥ずかしいことに、今、オートバイレースの世界で、どのチームのどの選手が強いのか、ライバルは誰なのか、分からない状態で来ていた。そんな素人が観戦するのに応援するチームも無かったら、何をどう観てどう楽しめばいいのか途方に暮れていたかもしれない。 応援しているチームが予選を通過して決勝で順位を下げたり上げたりしているのを追いかけながら最後まで楽しむことができた。 音がすごい、という前情報があった。現地で耳栓が売られているのを見て、それほどすごいのか、と思ったし、確かに大きな音ではあった。 でも今回の衝撃は、音ではなかった。