昨秋は仙台育英に勝利も県4強止まり「サイン以上のことをやる野球」を極め甲子園目指す【野球部訪問・東陵編①】
昨年の宮城県大会で春、夏、秋といずれも4強入りした東陵高校野球部。秋は準々決勝で2年連続甲子園決勝進出の仙台育英に勝利するも、東北大会出場は逃した。千葉亮輔監督いわく、秋からの新チームは発足当時、「本当に何もできない」チームだった。それでも強敵を下すことができたのはなぜか。そしてさらに上のステージへ進むために何をすべきか。千葉監督と主将の飯塚 祐太内野手(3年)に話を聞き、答えを探った。 【トーナメント】2023年秋季宮城県大会 結果一覧
「力がないことを理解」した東陵ナインの底力
4月上旬、野球部が練習する専用グラウンドを訪れた。東陵の校舎は宮城県最北端に位置する気仙沼市にあり、グラウンドは校舎から約10キロ離れた場所に建てられている。選手たちは春の地区大会に向け、真剣な表情で練習に取り組んでいた。 ひとり一人、実力校の選手に相応しい動きをしているように見えたが、主将の飯塚は「最初はアップも準備も片付けも全然できなくて、怒られてばかりでした…」と苦笑いを浮かべた。 千葉監督は新チームの選手たちを「上の代に食い込んでいけなかった」代だと捉えている。昨年の3年生の代は部員が40人以上おり、主将を務めた今野 悠貴内野手やエース左腕の前田 直哉投手(いずれも現・仙台大)ら、下級生の頃から主力を張っていた選手も多かった。昨夏、当時の2年生以下でベンチ入りしていたのは飯塚と沼田 和丸外野手(現3年)のみ。秋は大幅に刷新された新チームで迎えた。 危機感を覚えた飯塚は、チームメイトに「自分たちは下手なんだよ。一つ一つのことをスピード感を持ってやらないと、ほかのチームには及ばないよ」と繰り返し言葉をかけた。飯塚が変化を感じ取ったのは、秋の地区大会で日本ウェルネス宮城に完封負けを喫した直後。「自分たちは下手」という言葉の真意を肌で感じたナインは目の色を変え、練習の量と質を向上させた。 「力がないことを理解している代は強いんです。今の代はずば抜けて能力が高い選手はいません。それでも、みんなで頑張らないといけない、みんなで勝たないといけないという雰囲気があって、それが良い方向に向かっていると思います」 そう胸を張る千葉監督は練習中、常にグラウンド全体を見渡している。マネージャーを含む部員61人(4月2日時点)、全員がチームに欠かせない戦力だからだ。ケガをしている選手も別メニューをこなしたり、サポートをしたりして練習を盛り立てる。先輩たちから受け継がれてきた東陵の強みが、今年の代はより色濃く出ている。