昨秋は仙台育英に勝利も県4強止まり「サイン以上のことをやる野球」を極め甲子園目指す【野球部訪問・東陵編①】
主将が察知したチームの変化と「勝てる予感」
昨秋の県大会初戦は投打が噛み合い、大崎中央に8対1で勝利した。石巻工との2回戦は主力選手が相次いでインフルエンザに罹患する危機に直面するも、代わりに出場した選手が補い9対2で快勝。「みんなで勝つ」野球をまさに体現した。 準々決勝の相手は仙台育英。昨年は春、夏と続けて県大会準決勝で当たり、いずれもコールド負けで敗退した。実力のあった昨年の3年生の代でも勝てなかった強敵だ。怖気づいてもおかしくないが、飯塚は「実は、勝てる予感があったんです」と明かす。「仙台育英と試合をする夢を何度か見たんですけど、その時も負ける夢は見なかった。負ける気がしないまま試合に挑めました」。そう思えるほど、チームは短期間で急速に成長していた。 試合は4回に沼田の適時打などで2点を先制。投げては先発した高身長左腕・熊谷 太雅投手(現3年)が角度のある直球を武器に好投し、9回1失点完投で1点のリードを守り切った。「そろそろ勝ちたい、先輩たちの借りを返したいと思っていたので、とにかくうれしかった」(飯塚)。主将の夢は正夢になった。 このまま勢いに乗りたかったが、続く準決勝の古川学園戦は一時4点のリードを奪いながらも6対9で敗戦した。3位決定戦も仙台一に3対5で敗れ、東北大会出場はならず。4強の壁は厚かった。
「もう一息」を乗り越えるために必要なこと
千葉監督は「新チームのスタートを考えると伸びたと思う。仙台育英さんに勝ったこともすごいこと」と選手を称える一方、「甲子園で勝つことを目標にしている以上、まだまだ足りない。もう一息でしたけど、もう一息では甲子園には行けない」と冷静に現状を見つめている。 4強の壁を超えるために必要なことは何か。指揮官は「いろいろな要素がありますが…一番は自分たちで考えられるようにならないといけない」と話す。 「選手には常に『サイン以上のことをやってくれ』と伝えています。例えば、ヒットエンドランのサインが出たけど、ランナーのスタートが良かったので打たなかった。バントのサインが出たけど、バントシフトを敷かれたのでプッシュバントやバスターに切り替えた。これらはサインを無視したわけではなく、自分でジャッジをして選択したということ。勝っている時は、選手がそういうことをできているんです」 経験の浅さゆえ当初は「指示待ち」だった選手たちが、「何も言わなくても自分たちでやれるようになってきた」のは事実。ただ甲子園を見据える上では、より感覚を磨き、より能動的に動けるようにならなければならない。歓喜と屈辱を知った東陵ナインは、2014年春以来となる甲子園の土を踏むことができるか。まずは「もう一息」を乗り越えるべく、春の戦いに臨む。 (取材=川浪康太郎)