直径4m!“世界最大級”の巨大タイヤを24時間・日々テスト!? ブリヂストンが掲げる「断トツ商品」の進化とは
巨大なタイヤの試験ということで、施設内にも巨大な設備が並びます。まず五右衛門風呂のような形のORタイヤ用リムにタイヤを組み込みます。フォークリフトでタイヤを持ち上げながら位置を調整し、リムの上にはめ、匠の技でリム組みを行います。 続いて静荷重試験。タイヤを立てた状態で荷重をかけ、タイヤの接地形状やサイドウォールにかかる力などを測定します。 そしてドラム試験。これまで見たことのない大きさのドラム試験機で、動的な試験がおこなわれます。
最後にカットサンプルの作成。試験に使われた試作タイヤは、切断して内部が見えるようにすることでメカニズムなどを調べあらゆるデータを収集、故障しない今後のORタイヤ開発に役立てるといいます。 このORタイヤ試験センターには30人以上のスタッフが勤務しており、24時間性能評価をおこなっているそうです。
ブリヂストンの商品設計基盤技術「エンライトン」ってなに?
続いて見学したのが、ブリヂストン防府工場でのPSRタイヤ(パッセンジャー用タイヤ)の製造工程です。
ブリヂストンは近年、「エンライトン(ENLITEN)」という商品設計基盤技術を打ち出しています。 エンライトンの考え方とはつまり、「薄く」「軽く」「円く」設計することで従来のタイヤ性能を向上させた上で、タイヤに求められる性能をユーザーごと、クルマごとにカスタマイズするというもの。これはORタイヤ「マスターコア」の、それぞれの鉱山ごとにタイヤ性能をカスタマイズすることとも似ています。 エンライトンは2020年にVW「ゴルフVIII」に新車装着された「トランザ・エコ(TURANZA ECO)」に採用されたのを皮切りに、これまでグローバルで約20商品に搭載されており、2024年2月に発売された「レグノGR-XIII」にも国内市販用乗用車向けタイヤとして初搭載されました。 エンライトン搭載商品は今後もグローバルで拡大していく計画で、2026年には約45商品でエンライトン搭載率65%、そして2030年には約100商品で搭載率100%を目指しています。 この商品設計基盤技術のエンライトンと融合させるモノづくり基盤技術が「BCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)」です。 これまでタイヤは商品それぞれで開発されてきましたが、BCMAの考え方はタイヤを「カーカス」「ベルト」「トレッド」の3つのモジュールで開発、さまざまな背反性能の両立をこのモジュールの組み合わせで実現することで、性能や環境、コスト、生産性を両立するといった考えになります。 具体的にいえば、「トレッド」というモジュールを載せ替えることで、レグノやポテンザなど新たなプレミアム商品を創造していくということになります。これまで各々で行われていたタイヤ開発の効率化を図ることで、スピーディな商品開発に結びつけるといいます。 ※ ※ ※ エンライトンが搭載されたタイヤが、今後数多く作られることになる防府工場の生産ラインは、とてもクリーンで、人が少ないことに驚きました。
タイヤは「黒くて円いゴム」ですが、その中身はコードやスチールベルト、ビード、そしてゴムからなる複雑な商品だったりします。それを機械化の進んだ工場でそれぞれの部品が作られ、組み合わされ成型され、釜に入れ加硫され、最後タイヤとなって出てきたものを見たときには、感動すら覚えました。 また10年ほど前にタイヤ工場の見学をしたときに比べて、圧倒的にゴムの臭いが少なくなっていることにも驚きました。このあたりの対策も進んでいるということでした。
VAGUE編集部