【ブリーダーズカップ】青空のデルマーで見せた爽快な走り
「時代は変わったんだな」――今年のブリーダーズカップ、全12レースに過去最多となる19頭もの日本馬がエントリーしたという話を聞いた際、筆者は率直にそう思った。 【動画あり】最強女王!アーモンドアイ 歴代最多 芝GI9勝&圧巻の世界レコード|競馬大好きママのスナック美馬女 今から28年前、タイキブリザードが参戦したことで始まった日本馬のブリーダーズカップへの挑戦。 ダート競馬の本場であるアメリカでの開催ということで日本馬は毎年のように苦戦を強いられることが多かったが、近年では全く勝負ならないということはなくなった。 レースへの臨戦過程や展開さえハマれば、必ず好結果を出せる――そう期待されるような走りを見せる馬が増えてきたように思う。 そこで今回は日本馬が参戦し、日本でも馬券販売があった3レースを振り返りたい。
■ブリーダーズカップターフ
まずは日本時間3日の午前1分ごろにスタートしたブリーダーズカップターフ。 昨年のこのレースで3着に食い込んだダービー馬シャフリヤールと今年の大阪杯で2着に入ったローシャムパークの2頭がエントリー。世界の強豪たちに真っ向から挑んでいった。 スタートでローシャムパークが出遅れるという日本馬にとって苦しい展開となったレースはスタート直後、カボスピリットが逃げたのを筆頭に地元アメリカ勢が先団を形成する流れに。 これを見る形で2年前の覇者であるレベルスロマンス、ルクセンブルクといった欧州の実力馬が並んで行った。 内枠からのスタートとなったシャフリヤールは中団前目を追走し、スタートで遅れたローシャムパークは最後方でホームストレッチを通過して行った。 芝コースがメイントラックの内側にあるデルマー競馬場の芝2400mコースはコーナーを6回も回るという日本でもなかなかない小回りコース。 ともに広いコースを得意としていた2頭には不利なコースレイアウトに思われたが、向こう正面を過ぎた辺りからシャフリヤールがポジションを上げ始めたが、ローシャムパークはまだ後方のまま。 残りの直線の短さを加味するとこの辺りで動かないと厳しく思われたが……ローシャムパークの鞍上、クリストフ・ルメールはハッキリとしたビジョンを描いていたのかもしれない。 3コーナーを過ぎた辺り、馬群が激しく動き始めた中で1番人気のレベルスロマンスが満を持して先頭に立つと、それまで後方にいたローシャムパークも外からマクるような形でポジションを押し上げていった。そして大外に持ち出したころに最後の直線を迎えた。 早めに先頭に立ったレベルスロマンスがゴールを目指してひたすらに走り続けるのを各馬が懸命に追うという展開になったが、この時に目を見張る追い込みを見せたのは最後方にいたローシャムパーク。 一歩、また一歩と伸びていくフットワークは実に逞しく、気が付けば先行していたはずの馬群を一気に抜き去り、レベルスロマンスに迫っていく。 ルメールの鞭に応えるように、ストライドを伸ばしていったローシャムパークだったが、先に動いたレベルスロマンスをクビ差まで追い詰めたところがゴール。さらにここから1馬身半の遅れを取って3着に入ったのがシャフリヤールだった。 惜しくもレベルスロマンスを捕らえられず、日本馬初のブリーダーズカップターフ制覇を逃した形になったローシャムパークだが、ゴール前の脚色は目を見張るものがあった。 小回りコースのデルマー競馬場のトラックでもここまでキレる脚を使えるというのを見ると、今後のレースでも楽しみな存在となったことだろう。