進次郎氏への「失礼質問」が暴いた低迷日本の縮図 「弱点を補ってくれる仲間を作る」の重要性
経済の教養が学べる小説『きみのお金は誰のため──ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』著者である田内学氏は元ゴールドマン・サックスのトレーダー。資本主義の最前線で16年間戦ってきた田内氏はこう語る。 【写真】経済教養小説『きみのお金は誰のため』には、「勉強になった!」「ラストで泣いた」など、多くの読者の声が寄せられている。 「みんながどんなにがんばっても、全員がお金持ちになることはできません。でも、みんなでがんばれば、全員が幸せになれる社会を作ることはできる。大切なのは、お金を増やすことではなく、そのお金をどこに流してどんな社会を作るかなんです」
今回は、9月6日に行われた小泉進次郎氏の自民党総裁選出馬会見で飛び出た「失礼質問」と、進次郎氏の返答から見えてくる「低迷日本の縮図」を解説してもらう。 ■「弱点を補ってくれる仲間を作る」の重要性 先日、小泉進次郎氏の自民党総裁選への出馬会見で、フリーの記者が投げかけた質問が大きな話題になった。 「小泉さんが首相になって、G7に出席されたら知的レベルの低さで恥をかくのではないか。みなさん心配しております」
この挑発的な質問に対し、小泉氏は冷静かつ見事な切り返しを見せた。 「足りないところを補ってくれる最高のチームを作ります」と、自分の弱点を認めながら、具体的な対応策を示したのだ。 この回答には賞賛が集まったが、それ以上に「自分ができなければ誰かに頼ってもいいのだ」というメッセージに、ほっとした人も多かったのではないだろうか。 日本人は、「自分1人で頑張らなければならない」「弱みを見せてはいけない」という考えに縛られがちだ。
日本では失敗が許されない空気が流れている。 だからこそ、記者の質問のように「恥をかくのではないか」と常に心配し、その記者自身も質問に失敗して、SNSという世間から許してもらえない。 この完璧主義的で重苦しい空気が、社会全体の停滞を招いているのではないだろうか。 日本にはアメリカのGAFAのような新興企業が生まれていない。優秀で勤勉な日本人が多くいるにもかかわらず、アメリカのGAFAのような新興企業が生まれてこないのも、失敗を恐れてリスクを取れない社会の風潮が一因だ。