進次郎氏への「失礼質問」が暴いた低迷日本の縮図 「弱点を補ってくれる仲間を作る」の重要性
どれだけ「貯蓄から投資へ」とお金が回っても、新たな挑戦をする人がいなければ、イノベーションは起こらない。 ■凸と凹の噛み合い この「失敗を許さない空気」は、個人の生き方や働き方にも深刻な影響を及ぼしている。ビジネスパーソンは、英語は話せないといけないし、エクセルやチャットGPTも使いこなせないといけない。プレゼンやコミュニケーション能力の向上が求められる。 しかし、小泉氏が語ったように、足りないところを補い合うことができれば、もっと気楽に仕事ができるだろう。
社会学者の宮台真司氏も「凸と凹の噛み合い」の重要性を説いている。 英語ができなくても英語ができる人を頼り、体力がなければ体力のある人を頼る。すべてを1人で完璧にこなそうとするのはコストが高すぎる。だからこそ、お互いの得意な部分を活かし合うことで、集団全体の生産性を高めるのが賢い生存戦略だ。感覚的な話ではなく、数理的に考えてあたりまえの話なのだ。 アップルを創業したスティーブ・ジョブズも、「人に助けを求めることが成功の基盤だ」と語っている。
最近、金融経済教育に力を入れる学校が増えている。私も高校などで講演する機会があるが、その際には「今日は、お金よりも仲間のほうが大事なことを証明します」と語りかけている。 これは道徳の話ではない。お金という道具の意味を理解すれば当たり前の話なのだ。 ■「お金という道具」の役割 お金が存在しなかった時代、人々は村の中で協力し合いながら生活していた。お金が発明されると、村の人に直接頼らずとも、支払いによって必要なものを手に入れられるようになった。
しかし、それはお金が物に変わるということではない。お金を支払うことで、まったく知らない人の協力を得られるようになったのだ。お金とは、協力し合う仲間を増やすためのシステムなのだ。 では、「仲間を増やすためには、お金を増やせばいいじゃないか」と思うかもしれないが、これはまったく反対だ。 「お金を増やしたい」という目標を掲げても、誰もあなたに協力しようなんて思わない。あなたがお金を増やすことは他の人にとってまったくどうでもいいことだからだ。