子どもと衝突を繰り返す親に足りない視点 「子どもを意のままに操ろうとする」勘違い
子どもへの言葉がけに悩み、親の言動に苦しむ人もいるだろう。どのような点に注意すればいいか。家族間のコミュニケーションのコツを紹介する。AERA 2024年12月2日号より。 【図表を見る】「内定学生の判断に大きな影響を与える相手は?」はこちら * * * 反抗期、不登校、家庭内暴力、介護……。家族が抱える問題の複雑さは誰もが理解するところだが、親子で衝突を繰り返し、状況が改善しない場合はどうすればいいのだろうか。 家族カウンセラーの柿澤一二三さんは、こう語る。 「親は子育てを学校などで学ぶことがありません。そのため、親の一挙手一投足で子どもはだんだん傷ついていき、自然と不信感を抱いてしまうのです。その信頼を取り戻すことが、関係改善の第一歩です。『子どものことで困っている』と相談に来た親御さんには、『子どもを意のままに操ろうとするのではなく、自分自身が変わってみませんか?』と提案しています。家庭を“安全基地”にすることが重要なんですね。そうしないと、思い詰めた子どもが居場所を失ってしまいます」 柿澤さんは2男2女の母。実父を自死で失い、息子が荒れたり、娘が自殺未遂をしたり、ずっと家族関係で悩んできたという。 「その経験をブログやインスタグラムで発信していたため、それを見た親御さんたちが、子どもの不登校などの相談に訪れるようになりました。ただ、話を聞いていると、家族内では夫婦の不仲など、別の問題が起きていることがほとんど。まずはその問題を解決するように伝えています。家族仲が改善すれば、それが子どもに伝わることも多いです。ひとつの関係性が変わるだけで、家族全体の関係が大きく好転します」(柿澤さん) ■親の手のひらの上で 成人後に、親との向き合い方で悩む人もいる。大手自動車メーカーに勤める男性(31)は両親に対して、感情的になることが多い。根底には、親の敷いたレールから逃れられない自分への戸惑いがあるという。 「大学に合格したのは、親が塾に通わせてくれたおかげ。感謝はしていますが、就職だって親が『自動車メーカーはいいよね』とテレビを見ながら言っていたのが心に残り、自然と『車はいい』と刷り込まれていた気がします。人並みに反抗期はありましたが、ずっと親の手のひらの上で転がされてきました。結婚して子どもを持つことも考えていますが、それすらも『孫が欲しい』と親に仕組まれているのではないかと勘繰ってしまう」