「とんでもなく失礼な言葉です」ディオッサ出雲で何があったのか。渦中の2人がブラジルのポッドキャストで胸中を告白「私たちはただチームを成長させたかった」【現地発】
なぜ2024年の今になって抗議することを決めたのか
チームにはマッサンという名前の男性通訳が来たことがある。ちょうどCKの練習をしていて、彼女たちはマークの外し方やスポットへの入り方を提案したいと思っていた。しかし、通訳を介して監督やコーチに伝えると、みんなが笑い始めたという。その態度にマッサンとコーチの間で口論が起こった。この時、彼女たちはテクニカルスタッフがどう考えているかわかったという。 「きっと彼らは、こう考えていたんだと思います。通訳がいると、もっと質問されたり、もっと意見を言われたりするようになる。それは非常に厄介だ、と」 24年2月、2人は自分たちが受けた扱いについて技術委員会に話そうとしたが、解決策は見つからなかった。チームのディレクターに相談すると、彼は解決策を見つける手助けをすると約束したが、時間が経っても何もおこらなかった。 「チームのためを思って意見したら、コーチらから酷い扱いを受け、トレーニングにも出られなくなったことをディレクターに話すと彼は驚き、謝罪し、私たちに何が起こっているのか知らなかったと言いました。そして、『君たちを助けるためにできることは何でもする』と約束してくれました。でも、時が流れてもやはり何も起こりませんでした」 2月から8月にかけて、彼女たちはそれぞれ4試合に出場したが、どの試合もピッチに立つ時間は短かった。彼女たちは苦痛を感じながらトレーニングを続けた。 2人は2024年7月末に前にクラブの会長と話をしたいと要請したが、これがさらに状況を悪化させたという。 「私たちは会長に真実を知ってもらいたかったのですが、それがチェックメイトでした。監督やコーチは私たちを脅迫し、もし会長に話したら残りの試合には出場させないと言われました。私たちはもう家から出ることさえ嫌になりました。こんなことは人生で初めてでした。精神科医に診てもらうと、急性うつ病の診断が下り、ストレスから遠ざかるよう報告書を書いてくれました」 彼女たちが今望んでいるのは、クラブが二人に与えた損害を補償することだと言った。連盟やFIFA、そして日本の裁判所にはすでに訴えている。証拠も提出した。しかし、クラブがとった行動は、謝罪するでもなく自らを守るために弁護士を雇っただけだという。 「あれだけのことが起きたのに、クラブはコーチたちを擁護し続けています。私たちが手続きを始めても、気に留めることさえなく。私たちが何度もクラブに訴えたのは、抗議ではなく、助けです。助けが必要です、助けていただけませんか、と。そこで何かしらの行動を取ってもらえれば、それで終わるはずだった。ここまでの騒ぎにはならなかったはずです」 フェヘとラウラは、以下の3つの法的論点についてクラブを法廷に提訴した。 (1) パワー・ハラスメント (2) パワー・ハラスメントにおける職権乱用 (3) セクシャル・ハラスメント FIFAは声明を発表し、倫理委員会は提出されたいかなる苦情も真摯に受け止めると伝えた。 「私たちに日本に来るチャンスをくれたクラブを、閉鎖に追いやりたいわけではありません。私たちはただディオッサを成長させ、良いチームにしたかっただけです。チームで外国人は私たちだけでしたが、こうした心理的プレッシャーは日本人の選手たちにも日常的に持っているものでした。彼女らはそれをまったく異なる方法で私たちに表現してくれました。トレーニング中、誰も自分の感情を表現せず、笑いもしませんでした。練習は非常に重い空気の中で行なわれていました。私たちはチームメイトが苦しんでいるのを見過ごすことはできませんでした。でも、そうした気持ちも、私たちにとっては悪い方向に作用してしまいました」 2人はチームを変えるには問題のコーチ陣を一掃し、選手へのリスペクトも高めるべきだと考えている。一方、クラブはハラスメント行為は特定できなかったと発表。双方の意見が食い違う状況となっている。 取材・文●リカルド・セティオン 翻訳●利根川晶子 【著者プロフィール】 リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとし中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフー、ドゥンガなどとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。
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