「すべて計画通りに進んだ」J1連覇の神戸・吉田孝行監督が示した日本サッカー界へのアンチテーゼ
3度目の登板で示した日本サッカー界へのアンチテーゼ
空中戦に強く、キープ力にも長ける大迫を標的にロングボールを放つ戦法は、昨シーズンから「戦術・大迫」と揶揄されてきた。吉田監督が「周りから何を言われようと」と言及した理由でもあるが、ボールを回せる自信もありながら、それでも縦に速い攻撃を追い求める理由をこう語る。 「相手を後ろ向きの守備にさせれば、自分たちのストロングポイントが一番出るという意味で、常に狙っている形ではある。正直に言えば、日本のサッカーはスピードやテンポが遅かった。ここ数年、ようやくテンポが上がってきたなかで、僕たちがリーグ戦で優勝した昨シーズンをきっかけにして、どこのチームもインテンシティーの高さが大事だと気づいたと思っている」 ハイインテンシティーは、いま現在のヨーロッパの主流でもある。過去に2度、神戸の監督を務めるもともに解任された吉田監督が、3度目の登板を果たしたのが2022年6月。その後もチームは上向かず、このままでは降格する、という危機感を募らせたなかで覚悟を決めた。 ならば、選手たちは180度変わったスタイルをどのように受け止めているのか。ドイツで7年半にわたってプレーし、2019年夏に神戸へ加入した元日本代表のDF酒井高徳は「連覇した以上は、偶然とは言わせない」と、自信と吉田監督への信頼感を込めながらこう語っている。 「僕たちのサッカーがどのように言われているのかはちょっとわからないけど、他のチームがやっている、いわゆる『いい』と言われているサッカーを、みんながやらなきゃいけないというルールがあるわけじゃないのに、なぜそれをやれと言われるのかなと思う。押しつけのようなサッカーがあるとするのならば、それこそが日本サッカー界の最大の弱点じゃないかなと僕は思う」 今シーズンの副キャプテンを務めた酒井は、リーグ戦連覇を天皇杯との二冠で達成した今シーズンの軌跡が、ポゼッションが重宝される日本サッカー界へのアンチテーゼだと力を込めた。 「もちろんその(ポゼッション)サッカーを否定しているわけでも、僕たちのサッカーを肯定しているわけでもない。僕たちはとにかく勝つ確率を上げるために何をしなきゃいけないのか、というテーマを突き詰めてサッカーをしてきた。タカさん(吉田監督)をもち上げるわけじゃないけど、連覇したのはタカさんが日々チームの成長を考えてきた努力の賜物だと思う」