「すべて計画通りに進んだ」J1連覇の神戸・吉田孝行監督が示した日本サッカー界へのアンチテーゼ
史上6チーム目となるJ1リーグ連覇を成し遂げたヴィッセル神戸。リーグ戦と天皇杯、AFCチャンピオンズリーグエリートが重なった終盤の過密日程を勝ち抜いた背景には、吉田孝行監督が三度目の登板を果たした2022年6月以降の大きなスタイルの変化があった。かつて「バルサ化」を標榜した神戸・三木谷浩史会長も認めた神戸の縦に速いサッカー、ハイインテンシティーの真髄とは? 吉田監督が祝勝会後の取材で熱く語った揺るぎない信念と戦術論に迫った。 (文=藤江直人、写真=森田直樹/アフロスポーツ)
過密日程を駆け抜けたJ1連覇「すべて計画通り」
焦りのような思いには一度も駆られなかった。ヴィッセル神戸の吉田孝行監督はむしろ自信に満ちあふれたまま、史上6チーム目のJ1リーグ連覇の快挙を天皇杯との二冠獲得で達成した。 たとえば夏の中断期間明け初戦の8月7日。川崎フロンターレに0-3と完敗を喫し、順位を1つ下げて5位に後退し、首位を快走していたFC町田ゼルビアとの勝ち点差が今シーズンで最大タイの8ポイントに開いたときの心境を、吉田監督は意外な言葉とともに振り返っている。 「夏場以降で首位との勝ち点差が10ポイント以内ならば、絶対に優勝できると思っていた」 川崎戦以降の4試合で3勝1分けをマークして3位に浮上。町田に代わって首位に立つサンフレッチェ広島との勝ち点差を3ポイント差に詰めた9月には、リーグ戦に天皇杯、秋春制で行われるAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)が加わる過密日程の先をこうにらんでいた。 「9月からの連戦を乗り切っていけば優勝できる、という考えが頭のなかにあった」 実際に9月の代表ウイーク明けの約3カ月間で、実に18試合が組まれた連戦を神戸は13勝3分け2敗でクリア。その間に5大会ぶり2度目の天皇杯制覇を達成し、ACLEのリーグステージ東地区では12チーム中で3位と、ノックアウトステージ進出へ王手をかけて来年の戦いを迎える。 そして11月に入って首位に立ったリーグ戦では、直後の2試合を引き分けて足踏みを余儀なくされたものの、ホームのノエビアスタジアム神戸に湘南ベルマーレを迎えた今月8日の最終節で3-0と圧勝。2位の広島に勝ち点4ポイント差、3位の町田には6差をつけて美酒に酔った。 特に終盤戦で見せつけた、黄金時代を迎えた感のある強さを指揮官はこう振り返る。 「天皇杯もACLEもリーグ戦も、すべて自分の計画通りというか思い通りに進んだ」