“笑いが地球を救う!?”~ケンブリッジ大学生が落語に挑戦してみたら…【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
続いて、講談師の神田陽子さんが“講談と落語の違い”などを説明し、学生たちが「真田幸村大坂出陣」の一場面を「張扇(はりおうぎ)」で拍子をとりながら演じた。 驚いたのは、学生たちの熱量である。ワークショップを主催したケンブリッジ大学のラウラ・モレッティ教授が「誰か、やってみたい人!」と声をかけると、次々手が挙がる。誰かが高座に向かうと、日本語で「がんばって!」と聴衆から声がかかる。つっかえたり、間違えたりしても、ご愛敬。全員からあたたかい拍手が向けられる。 さらに驚いたのが、日本語の習熟度である。1年生はまだほとんどしゃべれないが、4年生ともなると立派に大人の会話が成り立つ。聞いてみると、大学の語学の授業で習っているだけで、他には何もしていないという。私は小学校高学年から約10年間英語を習ったのに、アメリカ留学当時、ほとんどしゃべれなかった…その差に驚く。 とはいえ、日本人でも難しい落語や講談を聞いて、おもしろいのだろうか…? 感想を聞いてみると、高座に挑戦した1年生はこう言った。「実は何を言っているのかよくわからなかったんだけど、その笑いのエネルギーみたいなのがすごくて、つい一緒に笑っちゃいました」 なんとなくわかる気がする。落語や講談は顔の表情やしぐさ、扇子や張扇の使い方など、全身で表現するので、言葉を超えたおもしろさが伝わるのだろう。 海外で落語を披露する難しさについて、立川志の春さんに聞いてみる。志の春さんは少し考えた後、「『人間ってこうだね』というのが、実は今と200年前とで変わらないんです。200年前の人も笑っていて、今の人も笑える、共感できる。江戸時代の人が笑っていたことで今の人も笑える、これはすごいことです。そんな話、なかなか作れないですよね。だから200年間、人々が笑い続けられている話なら、海を越えるぐらい簡単だよねって思うんです」と楽しそうに笑った。