“笑いが地球を救う!?”~ケンブリッジ大学生が落語に挑戦してみたら…【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
■“プーチン大統領”にインタビュー?
部屋で何かこそこそと2人でやっている。ジュースを運ぼうと部屋の戸口に立って「何しているの?」と聞いても入れてくれない。そのうち2人は廊下に出て、「ナーフ」と呼ばれる発泡スチロールでできた弾丸を撃つライフル銃もどきを持って撃ち合いを始めた。その模様を息子がスマホ片手に撮影している。夜9時を回っているのに、ドタドタと走り回る足音がうるさい。 私が「ちょっと、下の人に迷惑だから、やめなさい!」と、ついに叱ると、二人はしおしおと部屋に戻り、また何か始めた。部屋の中をのぞき見ると、スマホで何やら編集している。息子が「見ないで」と言う。そういえば息子は日本の学校でも、支給されたiPadを使って“映画もどき”を撮影していたので、何かその手のことをやっているのかもしれない。「あとで見せること」を約束して、完成を待った。 やがて、「できた!」の声が聞こえたので、部屋に入って鑑賞する。タイトルは『Interviewing Putin(プーチンにインタビュー)』。黒いキャップにサングラス、アップルのパソコンを膝に置いたプーチン大統領役がジョッシュ。インタビューする側の記者役が息子、という配役だ。
“記者”「ミスター・プーチン、あなたはなぜウクライナを侵攻するんですか?」 “プーチン氏”「それはだな、彼らが愚かだからだ。昨日、目の前を4羽のめんどりが歩いていた。道路を横切るのに1時間もかかった。あいつらは、このめんどり達よりも愚かだ。いらない存在なんだ。ロシア人は彼らより、ずっと優秀だからな」 (この手のやりとりが延々と続くので中略) そして、“記者”役の息子がこう尋ねる。 “記者”「でもあなたは、アメリカのアップル製品を使っていますよね?」 “プーチン氏”「そ、それは…うるさい、黙れ!」 最後はミスター・プーチンが記者を撃ち殺してしまう――という、なんとも残忍な筋書き。なんじゃそりゃ、と苦笑いしながらも、どこか引っかかる。いや、ものすごく引っかかる。子どものお遊びだと笑って済ませることもできるかもしれない。でも、こうした動画を作ろうと思う彼らの動機、おもしろがって親に見せる感覚…そういうものに、何かざらついたものを覚える。言葉にすれば、ヘイト、偏見、分断…そういうものが11歳の子ども達の中にしっかりと根付いてしまっているような気がする。