“笑いが地球を救う!?”~ケンブリッジ大学生が落語に挑戦してみたら…【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
私は半ばムキになって、ロシアのウクライナ侵攻について説明を始めた。ロシアと仲の良くない国のグループ、つまりNATO(北大西洋条約機構)にウクライナを入れたくないこと、ロシア政権が「ロシア人とウクライナ人は一体である」という思い込みからウクライナ人にいうことを聞かせようとしていること、2014年のマイダン革命やクリミア併合…ロシアのものと思われている、ボルシチやコサックダンスが、実はウクライナのものであること、ウクライナは土壌が肥沃で農作物がたくさんとれること、最近はITも盛んで「東欧のシリコンバレー」と呼ばれていること…最後は取り憑かれたように、取材で知ったありとあらゆる知識をしゃべって聞かせた。 怖かったのだ。彼らは毎日のように、ネットから様々な情報を自分で仕入れてくる。それは必ずしも、公平公正なものばかりではない。偏っていればいるほど、子どもはおもしろいと思う。“おもしろいもの”はSNSを通じて、またたくまに子ども達の間で拡散していく…この流れをどうしたら止められるのか。止められないにしても、良い方向にもっていくことはできないのか…。 ブシュッと派手な音がして、あたりにしぶきが飛び散った。見るとジョッシュが鼻水を垂らしている。ティッシュを渡して「歯を磨いて、もう寝なさい」と言うと、2人でいそいそと部屋に引きあげていった。壁の向こう側、深夜まで続く2人の話し声や笑い声を聞きながら、心にはりついた違和感はなかなか消えなかった。
■ケンブリッジ大学の学生が「落語」「講談」に挑戦
翌週、名門ケンブリッジ大学でおもしろい授業があると聞いて、取材に出かけた。日本語を学ぶ大学1年生から大学院生まで、およそ40名の学生に、日本から落語家と講談師が来て、実演と実技指導を行うという。 落語家の立川志の春さんは、幼少時の7年間をアメリカで過ごし、名門イェール大学を卒業。商社に勤務していたとき、偶然、通りかかって聞いた落語に衝撃を受け、商社を辞めて立川志の輔さんに入門した…という異色の経歴をもつ。時折、英語を織り交ぜながら“落語とはなんぞや”を説明。それから古典落語の演目「初天神」を日本語で披露した。学生たちは大爆笑。その後、学生たちも高座に上がり、「初天神」で子どもが親におねだりする場面を熱演。