「カフェが混みすぎて座れない」「いじわるベンチを使うのは訪日客だけ」…東京に「座るにも金が要る街」が増えた本質的な理由とは?
■ジェントリフィケーションが「座れない」街を作る? こうした都市の高級化を、ジェントリフィケーションという。元は、1960年代にイギリスの社会学者であるルース・グラスが提唱した言葉だが、現在では日本に限らず、世界の各都市で問題となっている現象だ。 このジェントリフィケーションの結果、渋谷では「気軽に座れる場所」が減少していると、筆者は考えている。それはなぜか? 先ほども書いたが、基本的に渋谷に近年誕生しているビルには、ちょっとお高めのテナントが入っていることも多く、少し休もう、と思ってもそう気軽に入れないことも多い。また、そもそも高層階はオフィスやホテルになっていることも多く、「座る」以前に、金を払わなければ外部の人間は立ち入れないところも多いのである。
ちなみにジェントリフィケーションは、「新しい建物を作るときに発生するジェントリフィケーション」「商業施設を作るときのジェントリフィケーション」「観光地化するときのジェントリフィケーション」の3つに分かれるといわれている(黄幸「ジェントリフィケーション研究の変化と地域的拡大」/2017年)。 渋谷の場合は、この3つのすべてに当てはまっている。再開発により新しい建物が建ち、商業施設ができ、観光地化している。まさにジェントリフィケーションの最前線だといえる。
こうした変化と「座れないこと」は直接に関係するわけではない。しかし、実際に現地でフィールドワークを重ねていると、都市の高級化に伴って、より階層の高いターゲットに向けられた場所が増え、自由に立ち入ることができたり、座ってたむろしたりできる場所が少なくなる現象が、渋谷の各所で発生していることがわかるのだ。 ② 防犯意識の高まり 次に、防犯意識の高まりについて。これは、何も悪いことではない。しかし、それに伴って起きている事態が、結果的に私たちを苦しめている。排除アートの問題だ。