「失われた世界遺産」の復元に生成AIが貢献
批判もあるAIだけど、こんな風に役に立つことも。 ある研究チームが、人工知能を使用してユネスコ世界遺産にある失われたレリーフパネルの3D再構築に成功しました。 【全画像をみる】「失われた世界遺産」の復元に生成AIが貢献 研究チームはまず、3次元オブジェクトの2D写真1枚から3次元のデジタル再構築を生成できるニューラルネットワークを開発。一体どういうものかというと、21世紀版の立体鏡みたいなもののようです。チームは先月開催された第32回「ACMマルチメディア会議」で、実証発表しました。
ユネスコ世界遺産を再構築
研究に使用されたのは、ユネスコ世界遺産であるインドネシアのボロブドゥール寺院のレリーフ画像。この寺院には2,672個の精密な浮き彫りが存在し、世界最大の仏教レリーフコレクションと言われています。19世紀後半、寺院の基部が再設置されたことで、156個のレリーフが石壁の後に隠され、現在も埋もれたままとなっています。しかし、埋められる前に、各パネルのグレースケール写真が撮影されていました。研究チームのニューラルネットワークは、134年前に撮影された古い白黒写真を使用して、現在は隠れているレリーフの1つを再構築することに成功したのです。
過去の問題点を解決
以前にも、写真の再構築はトライされていたんですが、レリーフの細かい詳細を複製することができなかったのです。細かい部分は深度値の圧縮により失われていました。つまり、3次元レリーフには、見る人から最も近い彫刻部分から最も遠い部分までの精密さがあり、以前の再構築の試みでは、様々な深度における精密さが平坦化されてしまっていました。研究チームは、こういった失われた特徴を「ソフトエッジ」と呼び、3D空間における曲率の変化に基づいてエッジのマップを開発したのです。 研究チームは、既存のエッジマップがモデルの精度を低下させていて、3D曲率の変化を適切に伝えることができていなかったことに加えて、ネットワークへの組み込み方法が物理的オブジェクトの深度推定に対する影響を制限していたと論文で指摘しています。