世界一周を通じて見えた日本のインバウンド観光の3つの課題
価格の適正化
2. Pricing:価格の適正化 ラスベガスでスターバックスに立ち寄り、バナナとコーヒーを注文したところ、なんと1500円もかかりました。日本との価格差は約3倍です。 この金額に驚かされ、物価感覚の違いを実感しました。悔しさすら感じました。日本と比較すると、アメリカの大都市圏では生活コストが高く、最低時給も約3000円と大きく違います。こうした背景を踏まえると、日本の価格が海外から見てどれほど割安に映るかがよくわかりました。 この経験から、日本の観光業界は自らの価格設定について再考する必要があると感じました。日本が「安い国」という評価を受けるのは、その経済的価値観が物価の低さに結びついているためです。しかし、これを逆手に取って、適正な価格戦略を打ち出し、観光客が対価を支払う価値を納得できるようなサービス提供を目指すべきです。 現在観光業界では「二重価格」が話題に上がっています。二重価格とは住民と旅行者で価格を分ける考えです。実際に二重価格を設定している国が多く、シンガポールのガーデンベイ、フロリダのディズニーワールド、インドのラダックで行った博物館なども地元の方と私達旅行者の価格は2倍近く差が開いていました。 住民は生活するために水道代や電気代等税金を払っているのに対して、旅行者はその負担がありません。その差を埋めるためにも、上記のような二重価格の設定や、宿泊税を観光への目的税として扱うことで、る街としての収入の増加策等は今後より重要になっていくでしょう。 この価格戦略の見直しは、観光業界が競争力を維持し、持続可能なビジネスモデルを構築する上で欠かせません。物価の安さが持つ魅力を活かしつつ、適正な価格を設定することで、観光客が感じる満足感や価値を最大化することを考えていく必要があります。
DXとAIの活用
3. DX/AI: デジタルトランスフォーメーションとAIの活用 世界各国を旅する中で、観光DXが進んでいる現状に驚かされました。インドで滞在したホテルでは、チェックイン時にSMSでリンクが送られてきて、そこからWi-Fi情報やアメニティの詳細を自動で得ることができました。たとえば、ランドリーサービスについて質問すると、botが「朝8:30-10:30に出してくれれば、48時間後にお返しします」と即座に回答があり、スタッフの負担が軽減されている様子が見て取れました。おそらくベースはbotの対応で、それ以外を人が対応し、徐々にbotに収斂する形を取るのでしょう。 また、アメリカやフランスでの体験になるのですが、Uberのアプリを利用して、現地で電動自転車やキックボードのレンタルもスムーズにでき、アプリを追加インストールする手間も不要でした。Lyftのアプリによって、Citi Bikeに乗ることができ、UberのアプリでLimeに乗ることができます。こうしたデジタル体験は、観光客にとって非常に魅力的です。新しいアプリをダウンロードする必要もなく、その場で快適に交通手段を選べる利便性が、旅全体の満足度を高めていました。 日本の観光としても、世界の観光DXのトレンドを踏まえた上で対応をすることで、観光業の効率化と観光客の体験向上が図れます。具体的には、観光地や宿泊施設におけるAIベースの自動応答システムの導入や、多言語対応のチャットボットの整備が挙げられます。観光客は必要な情報を即座に取得でき、スタッフの負担も軽減できるため、サービスの質も向上することでしょう。自社で多言語サイトを立ち上げるのではなく、MATCHAのような多言語での情報発信プラットフォームの活用の例も今増えてきています。 Diversity Friendly、Pricing、DX/AI、これら3つのキーワードは、今後の日本の観光産業が成長するために重要なテーマです。これらの対応により、日本は世界中の観光客にとってより魅力的で快適な目的地になりえるでしょう。観光事業者として、私たちもこの変革に積極的に取り組み、日本の未来を築いていきたいと感じています。
青木 優