40代以上は注目すべき《献血》のメリット「病気の前兆に気づける」充実のアメニティにポイ活も
献血への誤解によって医療崩壊の危機も!?
現在は200ml献血であれば16歳から可能となったが、日本の献血者数は特に30代以下の若年層の減少が著しい。 日本赤十字社によると、11年前の2013年の総献血者数は約520万人で、2023年度は約500万人と全体で見ると微減だが、30代以下は3割以上減った。 「献血できる年齢の上限は69歳。これまで献血を支えてきた40代以上の献血者は、今後『献血を受ける側』になっていきます。このまま少子高齢化で献血者数が減れば、医療崩壊も免れません」 そう警鐘を鳴らすのは、医師で医療ジャーナリストの森田豊先生。コロナ禍に、それまで行われていた学校や企業での集団献血が中止され、若い世代が献血する機会を失ったのも影響しているという。 献血に対するマイナスイメージが、SNSなどで広がっていることも減少を招いている要因だ。 「献血未経験であれば献血に対する『痛い、怖い』という心理的ハードルが高くなってしまいます。しかし、そこには誤解や勘違いも多いんです。正しい情報が行き届いておらず、人々の不安や疑問は解消されていません」(森田先生、以下同) 森田先生によると、採血用の針はインフルエンザなどの予防接種に比べると、痛みが少ないという。 「献血は痛点が少ない肘の内側から血管に針を刺すだけ。過剰に不安を抱く必要はありません」 中には献血で貧血になることを危惧する人もいるが、それは完全な誤解だ。 「そもそも献血者が安全に採血できるよう、厳正な基準が設けられており、事前検査で問題があれば採血されることはありません」 献血会場には医師や看護師が常駐しており、献血による副作用や体調悪化はほとんどないそう。
リピーターも少なくない献血
「貧血や低血圧になったことがあったり、健康状態に自信がなくて献血ができないと思い込んでいる人もいますが、血漿(けっしょう)や血小板だけを採血する『成分献血』であれば、すべての成分を提供する『全血献血』よりも血色素量の基準が低く、身体への負担も少ないので、献血ができる場合もあります。 この血漿を原料とした免疫グロブリン製剤などの『血漿分画製剤』の需要が現在は高まっており、必要量は1.3倍に増えているんです」 提供された血液がどう使われているか、それを知れば献血への意識は変わるのでは、と森田先生。 「献血をした血液のうち、ケガなどの治療で使われる血液はわずか3%ほど。残りは、がんや白血病、心臓病、肝疾患などの病気の治療に生かされています」 日本人の死亡原因第1位であるがんや高齢者が罹りやすいという病気の治療でも、輸血が不可欠だ。超高齢社会となった日本で、献血は誰にとっても“無関係”とはいえない。 また「ラブラッド」の血液検査サービスでは、医療用検査と同等の方法で測定した検査結果を閲覧できる。2009年から「糖尿病関連検査」が開始されており、自覚症状のない糖尿病予備軍を見つけられる可能性も。 忙しく、健康診断がおざなりになってしまう人ほど活用してほしいと、森田先生は語る。 「献血は、誰かのためという面とともに、自分自身の健康維持に役立てられる一面もあります。確実に人の役に立てるので、やりがいや喜び、満足感が得られ、自己肯定感を高めることにつながるのでリピーターも少なくない。手軽な社会活動だと考えてみてはいかがでしょうか」 冬から春先にかけては、風邪や花粉症により献血者が最も減ってしまう時期。今は事前にネット予約することもできるので、ぜひ一度、近くの献血ルームの情報をチェックしてみて。 お話を伺ったのは……森田 豊先生●医師・医療ジャーナリスト。医師として診療に従事しつつ、各種メディアで現代の医療問題への提言などを活発に発信している。東京上野ライオンズクラブにて献血促進活動に従事。 取材・文/オフィス三銃士