井岡 大みそか世界戦が中止「とても複雑な心境」 インフル感染で王者陣営は謝罪
31日に予定されていたプロボクシングWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチは30日、中止が決まった。前王者の井岡一翔(35=志成)が挑戦予定だった王者フェルナンド・マルティネス(33=アルゼンチン)が25日にインフルエンザに感染し、体調は回復しなかったため、王者陣営が中止を申し出た。興行は行われ、井岡はリング上でファンにあいさつをする見通し。両陣営は来春の再戦実現を目指し、交渉を続けていく方針だ。 黒いキャップをかぶった井岡は静かに現実を受け止めた。7月に敗れた因縁の相手マルティネスへのリベンジの機会を奪われ「キャリアでも初めて。受け入れないといけないが、なかなか実感が湧かない」と戸惑いを見せた。この日朝、体重の最終調整をしていた際に中止を聞かされたと明かし「とても複雑な心境だが、この状況を受け入れて次に進んでいくしかない」と前を向いた。 26日の公開練習を発熱で欠席したマルティネスは、同日に病院でインフルエンザと診断された。解熱剤を服用し、出場に意欲を見せていたが、この日までに体調は回復せず。マネジャー兼トレーナーのロドリゴ・カラブレッセ氏は「我々はやれることはやったが回復できなかった。皆さまにおわび申し上げたい」と謝罪した。 今月は当初、24日には世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)の防衛戦も予定されていた。ただ挑戦者グッドマン(オーストラリア)が来日直前に左目上を負傷し、試合10日前に興行の1カ月延期が決定。井岡は不運にも後に続く形となり、トラブル続きの異例の年末となった。 大みそか決戦は中止となったが、両陣営は再戦実現に前向き。体調不良による中止のため、王者はWBA王座の保持を認められることが濃厚だ。井岡は他団体王者へ挑戦する考えも持つが「やれるなら僕も戦いたいし、それがベストと思う」とマルティネス戦を最優先に考える。志成ジムの二宮雄介マネジャーは「これから協議するが、相手陣営も次は絶対にやりたいと言っている。今回試合をしていないし、WBAには暫定王者もいる。早い時期にやりたい」と来年2、3月の実現を目指して交渉していく考えを示した。 ▽過去の世界戦直前中止 20年11月にWBA世界ライトフライ級スーパー王者だった京口絋人(ワタナベ)はタノンサック・シムシー(タイ)との3度目の防衛戦の前日計量クリア後に、新型コロナウイルス感染が判明し中止。今年7月には、WBO世界スーパーフライ級王者の田中恒成(畑中)へ挑戦予定だったジョナタン・ロドリゲス(メキシコ)が前日計量で2・9キロオーバー。体重超過による中止は、国内初の事例となっていた。