通販・ECの「No.1」表示、消費者はどう感じている? 事業者はなぜNo.1表示を行うのか? 実態調査まとめ
適法性については、調査会社によっては景品表示法上の適法性を強調して勧誘を行っていることが分かった。例えば、過去に「不当表示のリスクが無いよう、No.1の裏付けとなる合理的な根拠を取得し納品します」などと記載された説明資料を配布するケースや、「顧問弁護士がリーガルチェックをしているので安心してほしい」と説明するケースが確認された。広告主からは、こうした説明を信用して調査会社を選定したという回答が寄せられた。ただ消費者庁によると調査会社の中には、「満足度 No.1」を訴求する表示の根拠として「イメージ調査」を実施して納品するなど、景品表示法の観点から問題のあるものも見受けられたという。
なお今回の報告書における「イメージ調査」とは、アンケート回答者に対し、対象商品と比較する商品のウェブサイトURLを示して各サイトの閲覧を促した上で、「ご覧いただいたサイトの中で、「サポートの手厚さ満足度が高い○○」だと思うものを、すべて選んでください。 [複数回答可]」などと質問するもの。回答者は対象商品や比較対象の利用経験の有無を問わず集められ、サイトを閲覧した際の印象に基づいた回答を集めるといった調査手法を指している。 □ 調査内容についての認識 広告主の多くの調査会社が「インターネット上で消費者に対してアンケートを実施していること」は把握していた。ただし、具体的にどのようなアンケート調査だったかについて詳しく把握していた広告主はほとんどいなかったという。 具体的には、 1. アンケート回答者がどのような質問に回答していたのか 2. 比較対象となる競合他社としてどの企業が選定されていたのか 3. (イメージ調査の場合)回答者は自社のウェブサイトのどこを見たイメージを回答していたのか を把握している事業者はヒアリング対象の広告主である15社中1社だけだった。 「イメージ調査」を実施していた広告主の多くは、「商品等の利用者に対するアンケートではないこと」自体は把握しているものの、「イメージ調査」が何かを理解していない事業者もいた。ヒアリングでは「イメージ調査であることは認識していたが、実際のアンケート回答画面は見たことがない。回答者に対して当社のウェブサイトのどの部分を見せていたのかも不明である。また、競合他社として、どの企業が示されていたのかも説明を受けておらず、知らない(学習塾・予備校)」といった声も寄せられた。 調査の具体的な内容を確認しなかった理由については、「調査会社を信頼していた」「調査のことは聞いても分からないので、調査会社に任せていた」「他社も同じ調査会社を起用していたので問題ないと思っていた」といった回答が多かったという。 □ 未然防止についての取組の状況 広告主の中には日頃から「不当表示を未然に防止するための管理上の措置(景品表示法第 22 条第1項)」に取り組もうとしている様子はあったとしながらも、「少なくともヒアリングの対象となった No.1 表示等については、ほとんどのヒアリング対象広告主において、表示の根拠が十分に確認されている様子はうかがわれなかった」(報告書)と断じている。加えてヒアリング対象の広告主の中には、調査会社から納品を受けた「調査結果レポート」といった No.1表示類の根拠資料について適切に保管しておらず、ヒアリング調査の依頼を受けてから改めて調査会社等から調査報告書を取得したというケースも複数あったという。