湘南をルヴァン杯決勝へ初進出させた独自「若手育成論」
湘南ベルマーレを率いて7シーズン目になる曹貴裁(チョウ・キジェ)監督(49)に、まったく迷いはなかった。延長戦を含めた120分間の死闘を終えても2-2のまま決着がつかず、もつれ込んだPK戦。緊張と興奮が交錯するなかで、1番手にプロ2年目の20歳、DF杉岡大暉を指名した。 それだけではない。FW山崎凌吾(26)、FW梅崎司(31)に続き、プレッシャーが増してくる4番手にDF坂圭祐(23)、5番手にMF金子大毅(20)とルーキーを立て続けに配置する。一見して大胆不敵に映るオーダーを自ら決めた指揮官は、試合後にこんな言葉をポツリと漏らしている。 「PK戦になった時点で、勝てると思った」 ホームのShonan BMWスタジアム平塚に柏レイソルを迎えた、14日のYBCルヴァンカップ準決勝のセカンドレグ。4日前のファーストレグも1-1で引き分けていた両者の激突はベルマーレに凱歌が上がり、クラブ史上で初めてとなる決勝戦進出をもぎ取った。 PK戦の末にV・ファーレン長崎を下した、7月11日の天皇杯全日本選手権3回戦でも1番手を務め、成功させている東京五輪世代の杉岡はまったく動じていなかった。このときとは異なる先蹴りだったが、レイソルGK滝本晴彦(21)の逆を突いてゴール左隅へ豪快に蹴り込んだ。 「外してもいい、というわけではないですけど、そういう気持ちで思い切り蹴りました。その方が自信をもって蹴れるし、逆に緊張しすぎてもよくないと思ったので」 実はPK戦直前にレイソルのFW瀬川祐輔(24)がプレー続行不可能となり、人数を合わせる関係で、ベルマーレ側も一人をベンチに下げなければいけなくなった。ルールの説明と人選で必要以上に時間がかかり、PKスポット近くに数分ほど立たされ続けても、杉岡の集中力が途切れることはなかった。 続く山崎は成功させたものの梅崎が外し、対するレイソルは全員が成功させて迎えた4人目。外せば敗色濃厚となる土壇場で、坂はほぼど真ん中に強烈な一撃を突き刺す。一転してプレッシャーがかかったのか。レイソルの4人目、MF江坂任(26)の一撃はバーに弾かれてしまう。