齋藤学が川崎F移籍理由語る。「一番厳しい道を選んだ。騒動起こしたが…」
昨シーズンの開幕前にもフロンターレは齋藤へオファーを出している。2年連続で高い評価を受け、しかも今シーズンの開幕が絶望となる大けがを負いながらも、フロンターレが姿勢を変えなかったことが最終的には齋藤の気持ちを傾かせた。 当初の診断通りならば、戦列復帰はワールドカップ・ロシア大会による中断が明ける7月まで待たなければいけない。それでも懸命なリハビリの積み重ねで、早くもボールを使ったトレーニングを開始。23日には全体練習に合流し、27日から沖縄県内で始まる第2次キャンプにも参加する。 「普通ではないペースで進めているけど、そこはメディカルチームとの話もある。ただ、8ヶ月をかけようとは思っていない。サッカー選手である以上は、タイミングとしては(ワールドカップ代表への)可能性を残せるくらいの時期に復帰しようと思っている」 昨シーズンのJ1を制し、悲願の初タイトルを獲得したフロンターレは主力がほぼ全員残留した。風間八宏前監督(現名古屋グランパス監督)時代に確立された独特のポゼッションサッカーに、鬼木達監督が標榜した泥臭さと守備の意識が融合されたスタイルは、ますます円熟味を増していく。 もっとも、相手に脅威を与えられる代表クラスのドリブラーがいない。追われる側となったいま、新たな武器が必要となる。選手がダブつくのでは、とも危惧される積極的な補強にも、大久保は心配無用を強調する。 「全部のタイトルを狙うのであれば、それぐらいのメンバーがいないと難しいと思う。どれを取りにいく、ではなくすべてを取りいくので」 連覇を狙うJ1だけではない。昨シーズンは決勝で敗れたYBCルヴァンカップ、準々決勝で敗れた天皇杯とAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の四冠制覇を目標として掲げるからこそ、大久保や齋藤らを補強して層をさらに厚くした。 4つの大会が佳境を迎える夏場以降は、過密スケジュールを余儀なくされることは昨シーズンの戦いから学んだ。たとえリハビリに多くの時間を費やされることがわかっていても、2年連続のオファーをへて、齋藤を迎え入れた理由がここにある。 マリノスに10年以上も所属し、齋藤の体を知り尽くしている篠田洋介フィジカルコーチが、昨シーズンからフロンターレに移ったことも背中を押したはずだ。 「いろいろな騒動を起こしてしまったけど、サッカー選手として、ピッチのうえで何をするかが大事だと思っている。ここで何もできなかったら、今日もらった拍手の意味もなくなってしまう。(拍手を)逆にプレッシャーにするというか、自分のプレーをできるようにリハビリを続けていきたい」 背番号は「37」を選んだ。マリノスユースに所属しながら、トップチームの公式戦に出場できる2種登録選手となった2008シーズンに与えられた思い出深い番号だ。 「ここで一から歩き始めるときにつけるには、いい番号かなと思って」 自分のサッカー人生は批判されることばかりと豪快に笑い飛ばす大久保は、「批判を覆すためにプレーする」との持論を介して齋藤へエールを送る。いばらの道の先に豊穣の秋が待つことを信じて、国内屈指のドリブラーはゼロからのチャレンジを加速させていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)