男たちが民主主義を救う時 【特派員コラム】
イ・ボニョン | ワシントン特派員
11月の米大統領選挙は史上2度目の「男女対決」だ。候補だけを考えればの話だ。実際、有権者たちの男女対決はとうの昔から進んでおり、ますます激しくなっている。米大統領選挙で男女対決が始まったのは1980年からとみられている。その前は違っていた。男女を問わず、有権者は候補者に集中する傾向が強かった。今よりは特定の政党だけを固定的に支持することもあまりなかった。ところが、1980年代からは女性は民主党、男性は共和党により傾く傾向が浮き彫りになった。 当選者の男女別得票率の格差を基準にした「ジェンダーギャップ」数値を見ると、それがさらに明確になる。例えば、男性票の55%、女性票の48%を獲得したなら、ジェンダーギャップは7ポイントだ。2004年に7ポイントだったこの数値は、共和党のドナルド・トランプ候補と民主党のヒラリー・クリントン候補が激突した2016年の大統領選挙では11ポイントまで広がった。トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン候補が競った2020年の大統領選挙では、ジェンダーギャップが12ポイントで歴代最高だった。2016年にはトランプ候補が獲得した男性得票率が女性得票率を11ポイント、2020年にはバイデン候補の女性得票率が男性得票率を12ポイント上回った。 7月25日に発表されたニューヨーク・タイムズとシエナ大学の世論調査の結果で計算したジェンダーギャップは、カマラ・ハリス副大統領が16ポイント、トランプ前大統領が14ポイントだ。これが実際の投票結果なら、誰がなっても歴代最大のジェンダーギャップ記録を塗り替えることになる。韓国の大統領選挙でも「2代男(イデナム=20代とその以下の選挙権を持っている男性)、2代女(イデニョ=20代とその以下の選挙権を持っている女性)」現象も目立つ。上記の調査で18~29歳の女性たちはハリス副大統領を男性より39ポイントさらに支持した。同年代の男性たちはトランプ大統領を女性よりさらに13ポイント支持した。 ジェンダーギャップの拡大には、支持候補に対する好感だけでなく、支持しない候補に対する嫌悪も大きく作用する。ハリス副大統領の支持者たちはトランプ前大統領に「よりによってあんな無頼漢を…」という態度を示している。トランプ前大統領の支持者たちは「よりによって黒人女性を…」と考える。これは、バラク・オバマ大統領以降、目立つ現象だ。トランプ候補の当選は、黒人にホワイトハウスを明け渡したことを嘆いた白人の反乱だった。敬虔なカトリック信者であるバイデン候補の当選は、トランプ前大統領の下品さに対する「普通の」米国人の反撃だった。さらに、男女対決の様相まで深まれば、弱り目にたたり目だ。 二極化がさらに進めば「男性党」と「女性党」の看板を掲げた党が政治を主導すべきという声があがるかもしれない。韓国と米国の政治が似ているもう一つの点は、若い男性たちの投票率が下がる傾向が観察されることだ。先の大統領選挙で、韓国の50歳未満の男性は、すべての年代で女性より投票率が低かった。2020年米国大統領選挙の18~29歳の男性投票率は44%だったが、女性は55%で11ポイントも差が広がった。全体的な男女投票率の差(3.4ポイント)の3倍を超える。 これをどう改善すればいいのだろう。単なる「どっちも悪い」から抜け出し、根本的な原因を考えなければならない。1980年、ジェンダーギャップ時代の幕を開けた共和党所属のロナルド・レーガン元大統領は、妊娠中絶権を強く否定し、女性の「伝統的」な役割を強調した。レーガン元大統領は反女性主義運動の強い支持を受けた。共和党はまた、女性たちの権利のための立法に反対し、女性たちから遠ざかっていった。これが民主主義、平等、進歩の方向ではないことは明らかだ。若い男性の政治に対する幻滅や保守政党への偏りには、それなりの理由があるだろう。だからといって、歴史の時計を巻き戻そうとする勢力に頼ってはならない。 男たちが民主主義を救わなければならない時が来たのかもしれない。 イ・ボニョン | ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)