雑誌も原爆ARも…すべては核問題考えるため 平和賞に抱いた「複雑な思い」 3世の〝伝える〟挑戦
「届いた」という手応え
金澤:端的に、短く伝えるのが難しいテーマもあるなか、これは相手にしっかりと伝わったなという手応えを感じた取り組みはありますか? 中村:雑誌を発行した時に開催した対面イベントで、iPhoneとイヤホンを置いて被爆者の方のインタビューの音声を会場で聞けるようにしたことがありました。 そこで来場者が足をとめて、音声をじっくり聞いて帰っていく様子を見たときに、私たちが意図していたことが伝わったのかなと感じました。 夏に渋谷のスクランブル交差点にキノコ雲を浮かび上がらせるARアプリを作ったのですが、これもARだけで全てを物語ることができるという意図で作ったわけではなく、ショート動画が好まれるなかで、どうしたらパッと見たときにインパクトがあり、引きつけられるコンテンツが作れるかというところが私たちのテーマでした。 ARアプリという導線の先として、「あたらしい原爆展」という企画展を開催したんです。そこには小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで来てくださいました。 会場の最後にはChatGPTも置いたのですが、色々な展示を見た後で、小学生くらいの男の子が「なんで僕たちの生きる未来なのに、大人たちは核兵器を作ったんですか」という質問を残していました。その質問を見た時に、「伝わったな」というか、その子なりに色々と考えて出した質問なのかなと考えると、グッとくるものがありました。 金澤:色々な層に届けるための仕組みづくりがうまくいったのには、どんな要因があったのでしょうか? 中村:全て自分たちでコントロールできたわけではなくて、日本が唯一の被爆国だからこそ、新聞やテレビの中にも「伝えなくては」と思ってくれる人がたくさんいるという背景があります。 この取り組みは、8月という、原爆について考えることが多い季節に合わせてリリースしました。それがうまくマッチした。 これは「8月ジャーナリズム」と批判されることもありますが、他の社会課題と比べて見たときに核の問題、被爆の問題は8月には必ずフォーカスされるという性質は特別なものだと思います。そこを上手く活用していくしかないのかなとも思いましたし、SNSでどうやって情報を流していくのかというのはまだまだ試行錯誤のさなかでもあります。