仏で「右派フェミニズム」の新潮流 移民犯罪が「女性の安全脅かす」と主張、リベラル主導に「ノン」
■女性指導者が多い「反移民」を掲げる右派政党
フランスでは第二次大戦後、哲学者シモーヌ・ド・ボーボワールが『第二の性』で女性を疎外する社会構造を描いた。1960年代、女性の権利運動が高まり、75年には人工妊娠中絶が合法化された。社会で女性が少数派だった時代、活動の中核は左派知識人が担った。キリスト教白人社会の家父長制に見直しを迫った。
いまは保革を問わず男女平等が政府の基本方針となり、イスラム移民社会の女性差別がやり玉にあげられるようになった。少数派だったイスラム教徒が増え、存在感を増したことが背景にある。
右派女性でも同性結婚やLGBT問題をめぐっては立場が分かれ、さまざまな団体が誕生した。ネメシス会員は現在、220人。欧州でのネットワーク作りを目指し、スイスや英国、イタリアに活動を広げる。
欧州で「反移民」を掲げる右派政党は、女性指導者が多い。イタリアでは22年、メローニ首相が右派政権を樹立。フランスではルペン議員の「国民連合」が第一野党となり、マクロン政権を脅かす。2月に総選挙を控えるドイツでは、ワイデル共同代表の「ドイツのための選択肢」(AfD)が勢いを伸ばす。政界の動きは、右派フェミニズム台頭と無縁ではない。(パリ 三井美奈)