<大河原邦男>巨匠に聞く「ガンダムSEED」メカデザイン “職人”としての姿勢
人気アニメ「機動戦士ガンダムSEED」シリーズの完全新作「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」が1月26日に公開された。新作には、ライジングフリーダムガンダムなどの新たなMS(モビルスーツ)が登場することも話題になっており、「機動戦士ガンダムSEED」「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」に続き、大河原邦男さんらがメカニックデザインを手掛ける。大河原さんは1972年に放送をスタートした「科学忍者隊ガッチャマン」で初めてアニメのメカデザインを手掛け、「機動戦士ガンダム」や「装甲騎兵ボトムズ」「勇者シリーズ」など数多くのメカを手掛けてきたメカニックデザイナーの“巨匠”だ。大河原さんのアトリエを訪れ、「SEED」シリーズをはじめとしたメカデザインについて聞いた。 【写真特集】大河原メカ続々 SEED新作 ズゴック 新MSも ビジュアル一挙公開
◇線を入れすぎない 重要なのはシルエット
大河原さんのアトリエには、パソコンがあるものの、デザインは手描きが中心だという。デザインは一人で行っている。
「アシスタントもいませんし、弟子もとりません。眠くなったら眠りますし、一人で自由にやっています。クライアントの要望でデジタルをやることもありますが、基本的にはアナログです。アナログ時代に育っていますし、アナログの方が線に特徴があっていい。私は線画だけですしね。カラーに関しては、アニメ制作会社の色彩設計の方が、監督と決めていきます。今はデジタルなので何色でも使えるのですが、アニメカラー(セル画用の塗料)が高かった時代の名残ですね。『SEED』に関しても色彩設計の方がカラーを担当しています」
長年、メカデザインを手掛ける中で、時代の変化も感じている。一方で、変わらずに大切にしていることもある。
「『ガンダム』が始まったのはもう45年も前ですし、その頃と今ではテクノロジーがまるっきり違います。デザインに関しても、テクノロジーにのっとったリアリティーがありますしね。玩具はセーフティートイの基準がありますし、鋭角をあまり多用しない。そうすると限られてくるんです。メカもキャラクターなので、シルエットでこのメカが何であるかを表現します。複雑なディテールはあまり必要ないんですよ。空間恐怖症というものがあって、広い空間があると、埋めたくなるのですが、私の場合は逆に線を入れるのが怖いんです。F91(1991年公開の『機動戦士ガンダムF91』)の時は、ディテール入れて、企画室で線を減らし、シーンによって線の数を調整してもらったことはありましたが、それ以降はそういう作業をしていません。今は線をいっぱい入れる人が多いですよね」